以前から、iPhoneのNFC機能が、次期iOSのiOS 12で重大な変化がもたらされるという情報はありましたが、The Informationの報道によると、Appleは来月の米国サンノゼ現地時間6月4日に開催されるWWDC18(世界開発者会議)において、NFCのポリシーを変更し、更に開放することになりそうです。そして今後デバイスのNFCチップで大量の新機能がサポートされることになるのは間違いなさそうです。例えば、ドアのキーカードとしても利用できたりしそうです。
内部情報に詳しい人物によれば、Appleは次世代iOSのiOS 12のリリースで、NFCチップの機能を開放し、その存在能力を更に発揮させるとのことです。なお、iPhoneだけではなく、Apple WatchもwatchOS 5以降でその恩恵を受けることになりそうです。
4年前の2014年、AppleはiPhone 6ではじめてNFC機能を搭載しました。しかし今のiPhone X/8シリーズに至るまで、iPhone上でのNFCチップはApple Payでの取引のみの使用に限られています。Appleは当初、サードパーティからのNFCチップへのアクセスをさせない理由は、主にiOSの保護のため、としていました。そんなわけで、その後リリースされたApple WatchのwatchOSもNFCへのアクセスが禁止され、NFCが本来持っている多くの利便性の実現が制限されていたのです。
上記のソースからの情報によると、iOS 12ではサードパーティがNFCにアクセス可能となって読み書きができるようになるということですが、プライバシー的に敏感な情報はセキュアエンジンのSecure Enclaveにしか保存できないということです。しかし明らかに、AppleがNFC機能をサードパーティ向けに開放すれば、iPhoneには更に非常に多くの全く新しい機能、特にデータ伝送と個人認証の2つに基づいた機能が増えることになります。そんなわけで、iPhoneによるApple Payモバイル決済以外にも、交通機関(バス・電車・地下鉄等)や会社やホテル・自宅などで使用可能なキーカード機能、またはNFCによって外部音響デバイスとの接続が可能となると予測されます。
実際に、Appleの従業員は現在iPhoneを使ってAppleの新本社社屋であるApple Parkのドアを開けることができるようになっており、また去年FCC(米国連邦通信委員会)に提出された書類の中でも詳細にこの機能が紹介されています。キーポイントは、Apple ParkのセキュリティアクセスシステムがAssa Abloyの子会社のHID Globalが設計を担当していることで、同社がもともと使用しているのはAndroidデバイスと互換性のあるNFCソリューションであるということです。
これまでの報道によれば、AppleとHID Globalとの話し合いは少なくとも2014年から始まっており、その目的はiPhone上でNFCを通じたセキュアなアクセスのシステム構築とされてきました。Appleは更にCubic社とも話し合いを行っており、iPhoneを通じて公共交通カードのような役割を果たすことが検討されてきました。つまり、今後iPhoneは大衆交通輸送システムの中で、非常に利便性が高まるといえそうです。現在のところ日本のSuica、中国の北京と上海では、Apple Payを使ったNFCが公共交通システムで使用することができるようになっていますが、もしサードパーティにNFC機能が開放されれば、もっと多くの会社のカードがiPhoneで使えるようになりそうです。
過去四年間で、iPhoneのNFCの用途は非常に狭く、世界的にみれば殆ど発展してきませんでした。その主な原因はあくまでAppleの封鎖的なポリシーによるものでした。例えば、2017年、AppleはwatchOS 4とGymKitをリリースした際、Apple WatchプラットフォームはNFCを通じてフィットネスデバイスと個人認証を行うことでペアリングをすることができ、それによってインタラクティブなデータの同期ができたのです。そしてiOS 11でCore NFCがサポートされ、開発者はNFCを使ってNDEFデータタグのデータをスキャンできるようになったのですが、本当にそれに付いてこられているところは殆どありませんでした。
いずれにせよ、もしAppleが噂通りにNFCのAPIを更に開放し、十分な数のデベロッパがその新しいAPIを使った機能を開発すれば、iPhoneのNFCの発展は、これまでの4年間のiPhoneの発展よりも更に多くの機能を実現することになる可能性は高いといえそうです。
もちろん上記は噂に過ぎず、真相は6月4日(日本時間6月5日)のWWDC18で発表されます。iOS 12では逆にNFCのサードパーティへの開放以外にはほぼ目玉機能はなさそうなので、AppleはこのNFC機能開放を強調してくるかもしれません。
しかし今後、Apple Payを使わない決済方法がiPhoneのNFCで実現することで、AppleはApple Payの手数料収入が減ることになり、一時的に売上が下がる可能性もなきにしもあらずです。ただ、今後利便性が高まれば多くの交通機関や決済会社が導入を検討することになり、iPhoneも利用者が増えることになりそうです。AppleがApple Payの微々たる売上を守るよりも、iPhoneのハードウェアをより多く売った方が儲かると判断した結果なのかもしれません。
ちなみに次期iOSのiOS 12は、6月4日のWWDC18基調講演で発表され、正式リリースは例年通りであれば9月ということになりそうです。
記事は以上です。
(記事情報元:The Information via iDownload Blog)