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策士Apple、簡単な著作印税の支払方法を提案してSpotifyにジャブを入れる

自分は全く傷つかず、相手は不利に。。Appleは本当に”策士”だ。

ストリーミングミュージックサービスの市場を巡る闘争は今でも続いている。Appleはこのたび、ストリーミングミュージックサービスは著作印税を固定にすべきだと提案した。そしてニューヨークタイムズによれば、音楽制作委員会と版権委員会が協力してストリーミングミュージックサービスに対し、固定した簡単で直感的な印税の課税方式を提案するもようで、具体的には100回ストリーミングされる毎に9.1セントの費用が発生する、などの方式が挙げられている。

版権制度は外から見ると非常に神秘的で複雑に見えるもので、それを簡略化するというのは一見よいことのように見えるが、Appleの提供するストリーミングミュージックサービス【Apple Music】のライバルで業界一位の【Spotify】にとってはこれは打撃となることは間違いない。というのも、もし固定印税方式になると、課金ユーザよりも多数の無料ユーザも抱えるSpotifyにとっては、ストリーミングミュージックの競争コストが上がってしまうからだ。

そしてもしこの新しい提案が通ると、Spotifyだけではなくストリーミングミュージック市場全体に重大な影響が出ることが予想される。なぜならSpotifyをはじめ、GoogleやPandora、Amazonなどストリーミングミュージックサービスを提供している企業は、複雑な連邦著作権法に従って特許権(印税)の支払いをしているためで、Apple以外の企業はストリーミングミュージックサービスをその他のサービスと一緒くたの課金の中でやりくりしていたり(例えばAmazon Primeでは購入品の送料が無料になったり、ビデオや映画なども見られるサービスもある)、Spotifyのように無料サービスでのストリーミングも発生しているからだ。

もし提案が通った場合、新しい規則は2018年に施行され、2022年まで続き、5年ごとに1回見直しと修正がなされるという。また見直しの際には連邦裁判官チームによって審査もされるようだ。そしてAppleはぜひともこの100ストリームに対して9.1セントという提案が通ってほしいと願っている。なぜならこれによって業界1位のSpotifyが打撃をくらうからで、Apple自体はもともと全てのApple Musicユーザに課金をしているため特に痛くも痒くもないからだ。なお、Appleはこの件についてコメントを拒否している。

Spotifyは無料ユーザも存在するが、1ヶ月10ドルを支払えば、広告が表示されなくなる。AppleはSpotifyのこのやり方がミュージシャン・アーティストや音楽出版側にとっては害になると考えており、ご存じApple Musicには無料ユーザはなく、有料ユーザのみとなっている(ただし最初の三ヶ月はお試し期間で無料。無料期間中もAppleは印税を払い続けているという)。

Appleはこの全て有料というやり方でテイラー・スウィフト(Taylor Swift)などを含む多くの一流人気アーティストを説得しApple Musicの味方につけ、そのアーティストの知名度とブランド知名度も使いつつユーザ数を増やしつつある。現在でも3000万人の課金ユーザを抱える業界一位のSpotifyに対して、先月の時点で1500万人とユーザ数で水をあけられているとはいえ、ストリーミング音楽業界では2位の無視できない大勢力になっている。

Spotifyは有料課金ユーザの他に無料ユーザを7000万人も抱えており、ストリーミング単位で著作印税を徴税されるとなると、この無料ユーザ分も支払わなければならなくなる。つまりユーザ全体の1億人分を支払うことになり、現在よりも圧倒的にコストが増えるということになる。

なお、今回の件は著作印税が対象で、原盤印税(音源制作側が持つ権利に対する支払い)についてはまた別の扱いとなっているようだ。

記事は以上。

(記事情報元:New York Times

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