AppleとEpic Gamesの喧嘩の舞台が、今度は【ブラジル】に移りました。EpicがブラジルのCADE(経済保護行政委員会。競争当局です)に申し立てを行い、Appleが当局との合意を「構造的・技術的・アクセス面の障壁」で骨抜きにしていると訴えたのです。CADEはAppleに月曜(現地時間8月24日)までの回答を求めています。EUで手数料の全面改定が決まった、そのわずか数日後の出来事です。

世界中の当局が、同じ1台を囲んでいる。そういう構図です。画像はイメージです。
ブラジルで何が起きているのか
前提を整理します。ブラジルではCADEとの合意により、今年から他社アプリストアからの配信と、Apple以外の決済が解禁されました。Fortniteがサイドローディング経由でiPhoneに戻った市場でもあります。手数料の建て付けはEUと似ていて、App Store外で配信されたアプリのデジタル売上に5%のCore Technology Commissionがかかります。
Epicの言い分は、この合意が実際には機能していない、というものです。申し立ての中身で目を引くのは次の2点です。
- 合意はiPadOSも対象のはずなのに、Appleは新しい条件をiOSにしか適用していない
- Appleが開発者に課している報告義務は手数料の計算に必要な範囲を超えており、競合の事業モデルを監視できてしまう
2点目は面白い論点です。他社ストアで商売をするのに、その売上の中身をAppleに報告し続けなければならないなら、Appleは競合ストアの商況を上から眺められることになります。手数料の話に見えて、実はデータの話なのです。
世界地図で見ると、同じ型が繰り返されている
この件は単独で見るより、世界地図の上に並べた方がよく見えます。
- EU … 手数料を全面改定し、欧州委員会は歓迎。ただしEpicは新体系を「ジャンク手数料」と呼んで反発
- 米国 … Epicとの裁判の差止命令で、外部リンク経由の売上から手数料を取れない状態が続く
- 日本 … スマホ新法で他社ストア・他社決済を解禁済み
- 中国 … 当局との協議で手数料を25%へ引き下げ。それでも開発者側は5%以下を要求
- ブラジル … 合意でサイドローディング解禁。今回Epicが「骨抜きだ」と申し立て
どの地域でも、同じ型が繰り返されています。①規制や合意で市場が開く → ②Appleが条件と手数料を設計して開き方を最小限にする → ③Epicなどが「これは開いたことにならない」と訴える → ④当局が再介入する。EUはいま④まで一周して、条件の作り直しに至りました。ブラジルは③の段階に入った、ということです。
Apple、EUのApp Store手数料を全面改定。1インストール0.50ユーロのCTFは廃止へ
Appleの防衛線は「ゼロにはさせない」の一点
ここからは私の見立てです。
Appleの行動は一貫しています。市場がどう開こうと、自社のOSの上で動く商売から一定の取り分を確保する。EUで5%のCore Technology Commissionを守り抜いたのも、ブラジルで同じ建て付けを持ち込んだのも、この一点のためです。逆に言えば、パーセントの数字自体は交渉次第で下げられる。実際、中国では30%を25%にし、EUではCTFを捨てました。絶対に譲らないのは「ゼロかどうか」であって、料率ではないのです。
Epicの狙いもはっきりしていて、外堀を一つずつ埋めることです。米国で判例を取り、EUで条件を動かし、ブラジルで運用の穴を突く。1社対1社の喧嘩というより、世界中の当局を巻き込んだ消耗戦で、そしてこの消耗戦は、Appleのサービス収益がある限り終わりません。
ブラジルの回答期限は月曜。CADEは過去に日次の罰金をちらつかせてAppleを動かした実績のある当局なので、単なる書面の応酬では終わらない可能性もあります。続報があれば書きます。
記事は以上です。
※記事中の画像はイメージです。

