Beatsの共同創業者で、現在はApple Musicの責任者を務めるジミー・アイオヴィン(Jimmy Iovine)氏が今週Music Business Worldwideのインタビューで、無料ストリーミングミュージックサービスについて否定する考えを表明した。
そしてもしAppleのストリーミングミュージックサービス、Apple MusicがSpotifyのような無料ベースのサービスになっていて、広告を出すかどうかについてユーザに選択させる方式をとっていたら、Apple Musicのユーザ数は4億人にも達するだろうとしたが、それはAppleが望むものではないという姿勢を表明した。
アイオヴィン氏は、無料のストリーミングミュージックサービスは実際、厳密にいえばかなりうまくやっているとは捉えているが、とはいえそのことが有料ストリーミングミュージックサービスの発展を妨げているとも考えているようだ。
更に、多くのアーティストが音楽を作ってもお金が儲からないと感じ、時にはアーティストは作品を単に宣伝ツールとしてしか捉えておらず、それによってメディアへの露出度を上げたり、またライブ・コンサートのチケットの売上げを増やすことしか考えていないということも指摘している。アイオヴィン氏や彼のチームはアーティストやミュージシャンはやはり直接その音楽作品から利益を得るべきと考えており、そのことが彼のチームがAppleに加盟した理由でもあったことを明かした。
またアイオヴィン氏は、AppleによるBeats買収の際に、スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)やエディ・キュー(Eddie Cue)SVPと話して、この2人が熱意を持ってアーティストをサポートするためにストリーミングミュージックサービスを行うことの共感を得たためAppleと組んだということも明らかにしている。
Apple Musicはこれまで、ドレイク(Drake)やフランク・オーシャン(Frank Ocean)、そしてテイラー・スウィフト(Taylor Swift)等に独占的にApple Musicで提供するチャンスを与えてきたことについて、今後もアイオヴィン氏はそのようなことを時折行うとはしたが、レコード会社にそればかり期待はしないようにとも釘を刺している。
アイオヴィン氏は、彼自身が有言実行の人で、ずっとApple MusicとBeats Musicが無料ストリーミングミュージックサービスにならないように務めてきたとしている。またこれまでの複数回のインタビューで語った内容と同様、Apple Musicが”ポピュラー・カルチャーの最前線”であり続けることをこれからも固く信じ続けるとも語っている。
小龍的にはこう思った:音源で収入を得る時代は終わった、原点回帰したのでは
以前中国北京で音楽事務所のバンドマネージャーをやっていた自分としては、中国ではもともと海賊版が蔓延し、そしてMP3の登場でオンラインミュージックの無料化が一気に進み、アーティストや事務所では音源による収入が殆ど見込めなかったことから、最初からライブ・コンサートのチケット売上や物販での収入、そして広告への出演による収入しかほぼ収入がないという構造だったことを覚えている。最初からそのように割り切れば、確かに音源は単なる宣伝ツールでしかない。
元々、録音する技術がなかった頃は、更に拡声器の技術もなかった頃は、音楽は本当にその人が弾く楽器の生音を聴きに人が集まったものだった。だからそれほど多くの人に聞かせることはできなかったはずだ。楽譜の売上げはあったかもしれないが、現在のようなビジネスにはなっていなかったはずだ。現在では拡声器の技術もあり、より多くの人に音を聴いてもらえるようになった。ライブ・コンサートで稼ぐというのは本来の音楽の姿、つまり原点回帰したのではないだろうか。音源はそのための宣伝ツールというのは、実はそんなに悪いことではないと思う。現在は以前と違って録音もそれほど大がかりな機材は必要なく、iPhoneだけで録音することだってできる時代になった。そしてリスナーも圧縮された音源をデジタルデバイスで再生して、一般的にはそれほど高くないヘッドホンやイヤホンで音源が聴かれる時代だ。
アイオヴィン氏の考え方はもちろん本心であろうが、個人的にはちょっと古い考え方のように聞こえる。ただ、彼の立場からしても既得権益がある業界への配慮がある発言なのではないかとも思う。
ちなみに、Apple Musicの有料ユーザ数はAppleの公式の発表では昨年末12月の時点で2,000万人を突破したとされている。私自身もそのうちの1人。日本の音源を聴きたいときには重宝している。更に私は中国の音源を聴きたいときのために、中国の”酷狗”などのストリーミングミュージックサービスの有料会員にもなっている。また、本当に好きなアーティストのCDは買うようにしている。個人的には、やはり好きなアーティストは応援したい気持ちがあるからだ。
記事は以上。
(記事情報元:MacRumors)