VentureBeatの報道によると、Appleは来週火曜日に発表する2016年会計年度Q2の財務レポートで、恐らく2つの傾向が注目されるだろうとしている。1つは、ハードウェアの販売の落ち込みがどのくらいか?そしてサービスの成長がどのくらいそのハードウェアの販売の落ち込みをカバーするか?ということだ。
Appleウォッチャーやアナリスト達は、iPhoneの販売台数は今年は落ち込む傾向にあり、iPadも継続して右肩下がり。そして昨年リリースされた新製品のApple TV 4GやApple Watchはある程度売上げの増加に繋がるだろうが、全体の落ち込みはカバーできないとみているようだ。
テック業界のアナリスト、ベン・トンプソン(Ben Thompson)氏はブログStratechery上で、Appleはハードウェア基軸の成長企業から、サービス基軸の成長企業に変化することを望んでいるとし、その変化を望む原因や、Appleがそれによって挑戦しなければならないことについて詳細に書いている。ただ全体的に見て、彼がAppleに書いた処方箋は、既に他の製品を持っている人達により多くサービスを使ってもらい、そしてそのサービスでより多くのお金を使ってもらう、というものだ。またAppleは四半期毎の財務報告でハードウェアの販売台数の数字を発表しているが、今後はAppleのサービスのユーザ数の方が重要になってくるだろう、とも書いている。
確かに、これまでAppleのティム・クック(Tim Cook)CEOも、財務報告会議ではこの点を常に強調してきた。Appleのハードウェアの販売の成長速度は遅くなってきており、ジャンルによっては販売台数そのものが減少してしまっているものもあるが、ユーザ数は引き続き増えているというのだ。マーケティングリサーチ機構のVerto Analyticsは新しいレポートの中で、Appleのユーザ数について試算した。以下がそのレポートの中で興味深い数字だ。ちなみに全てアメリカ国内の数字だ。
【Appleのオンラインサービス利用者数】
- 3月にAppleのいずれか1つのオンラインサービス(ネットワーク或いはアプリ含む)にアクセスしたアメリカのユーザは、少なくとも1億2440万人おり、これはつまりアメリカ人のうち半分以上の大人(支払い能力のある人)がAppleのサービスを利用しているということになる。
【iOSユーザ数】
- iOSユーザだけを見れば、3月で9130万人、そのうちiPhoneユーザが7300万人、iPadユーザが5430万人(当然重複がある)。
- iOSユーザのうち、66%が女性。
【Appleのジャンル別市場シェア】
- 2016年の第一四半期に、Mac(MacBookとその他デスクトップ機)ユーザの、全体のコンピュータユーザの中に占める割合は1年前の2015年Q1と比べ1.9%増加し、12.9%となった。
- 2016年Q1のiPhoneのアメリカでのスマートフォン市場内のシェア率は昨年同期比1%成長し、41.8%となった。
- しかし、同時期のiPadのタブレット市場でのシェアは1.9%低下し、38.6%となった。
- 使用されているiPadの中の23%が未だに旧機種のiPad 2。
- Apple Watchは使用されているウェアラブルデバイスの中でシェア率は17.5%。
- Apple TVは2016年Q1ではストリーミングメディアプレイヤーの中での市場シェアが前年同期比5%成長し、16.5%となった。
Verto AnalyticsのCEO、Hannu Verkasalo博士は、「相対的にみて、Appleのデスクトップ/ノートパソコン及びスマートフォンでの業績はよく、市場シェアも引き続き成長している。Appleがもしアメリカやその他成熟市場で更に成長していくには、デバイスや現状のApp Storeでの支払いによる収入外のユーザベースのマネタイズに成功する必要がある」と分析している。
今後数ヶ月、Appleがいかに多くのユーザに対してApple MusicやiTunes StoreやApple Pay、そしてiCloudなどに対して興味を持たせるかが、今年のAppleが厳しい状況になるかどうかを左右しそうだ。
画蛇添足 One more thing…
上記のApple Payについては端末を買わないと使えないので、その他のユーザベースからの収入というわけにはいかないだろうが、いずれにせよAppleユーザ以外のユーザをAppleの「エコシステム」に取り込むことが重要となってくるだろう。
サービスは本来ものつくりよりも利益率は高くなる仕組みだ。ものつくりには在庫リスクなど、様々なリスクが存在する。特に最近のAppleは製品ラインが複雑化し、色なども増え、スティーブ・ジョブズ時代よりも在庫が増えているはずだ。反面、Appleにはディズニーを始め様々な他社よりも有利なコンテンツのリソースもあれば、資金的なリソースもうなるほどあるため、今後もサービスを拡充していくことは他の会社よりも容易にできるだろう。
ただ、今回中国で突然中国政府広電局からのお達しでiBooksやiTunes Storeでのビデオや映画の販売がストップさせられるなど、グローバルで商売すると、他の意味でのリスクも存在するのは間違いない。今回の中国での2つのサービス停止は、Appleにとってはかなりの痛手となるかもしれない。
もちろん、いずれAppleのハードウェアの売上げが下がるのは目に見えており、サービス収入の重要性が上がるのは間違いない。いずれ利益の半分以上を依存しているスマートフォン市場そのものが廃れた後には、Appleはもうハードウェアの会社ではなくなっている可能性もある。そのくらいのビジネスモデルの転換をしていかないと、Appleでさえ今後生き残っていくのは難しいかもしれない。
記事は以上。
(記事情報元:VentureBeat)