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Androidスマホの”ノッチ”デザインは意匠侵害?Appleは特許優先権を保有

2018年は、スマートフォンの「ノッチディスプレイ元年」といえそうです。昨年AppleがiPhone Xを発表した際に、そのフロントディスプレイ上部の”ノッチ(切り欠き)”が多くのメディアやユーザからツッコミをくらいましたが、それから半年経った今、敵陣でもあるAndroid陣営でこの”ノッチ”の存在が既に「共通認識」となってしまっていて、iPhone Xに追随した全画面スマートフォンの「デザイン言語」となりそうな勢いです。

先日、2月26日〜3月1日にスペインのバルセロナで開催されたMWC(Mobile World Congress、モバイルワールドコングレス)では、ともかく”ノッチフォン”とも呼べる、”ノッチ”がある全画面スマートフォンだらけで目立ったそうです。特に中国国産ブランドのものに多かったという指摘もあります。

AppleのiPhone Xの大きな”ノッチ”はTrueDepthセンサー搭載で「Face ID」の実現のため

もともと全画面ディスプレイを実現するには、カメラや近接センサー、そして受話器のスピーカーは上の方に集中している必要があることもさることながら、Appleの場合はiPhone Xの「目玉機能」で、他社よりも2〜3年は進んでいるといわれている3D顔認証システム「Face ID」を実現するための”TrueDepthセンサー”を搭載するために、あれだけのスペースの確保が必要となったと思われます(それでもTrueDepthセンサーはAppleがPrimeSense社からその技術を買収したときの卓上タイプよりも断然小さくなりました)。

他社メーカーのものは無理矢理”ノッチ”を作ったものもある

しかし他のメーカーのものは単に従来のカメラやセンサーを搭載しているだけで、そこまで大きなノッチが必要ないものもあります。それらは明らかにiPhone Xを模倣したデザインを実現するために、無理矢理”ノッチ”を残しただけで、デザインに思想が感じられないとEngadget Japanにも指摘されているほどです。ソフトウェアレベルで”ノッチ”の左右のスペースが上手く活かされていない端末さえあることをみれば明らかです。もちろん、AppleのiPhone Xにもノッチデザインに思想が感じられるかというと、そんなことはないと言いたいですが。。

“ノッチ”がついたスマートフォンはiPhone Xリリース後半年で23種類に激増

以前、BGRが既に発売されているものと既に発売が決定している”ノッチディスプレイ”の端末の数を調査したところ、iPhone Xも入れて23種類にもなっているということです。以下がその写真です。ある意味、壮観ですね。

これ、かつて、見たことがありませんか?そう、10年前、Appleが初代iPhone(iPhone 2G)を出した後、突然サムスン(SAMSUNG)を含め、ほぼ全てのスマートフォンメーカーが全面ディスプレイ(今では全面とは呼べないですが。。)を採用したあの光景が。。

左がiPhone発売前、右がiPhone発売後の各社スマートフォンや携帯電話
法廷資料でも使われた、iPhone発売後のSAMSUNGスマートフォン

他社が”ノッチ”デザイン採用のスマートフォンをリリース、Appleの権利侵害にならないか?

とりあえずまずはその”ノッチ”が美しいか醜いかという問題は置いておいて、Androidがこの”ノッチ”ディスプレイを搭載したデバイスをリリースすることは、いわゆるパクリや意匠権・発明特許などの知財侵害にならないのでしょうか?

まず、Appleは2016年11月1日にアメリカ合衆国でiPhone Xの意匠登録を出願しています(アメリカの国境内のみ有効)。そして、2017年4月28日に、中国でも同様の意匠登録を出願しています。

しかしこの半年の間に、中国国産スマホメーカーのシャオミ(小米、xiaomi)も2017年1月23日に”ノッチ”ディスプレイの意匠権を出願しています。また同じく中国国産メーカーのOPPOも1月9日に2種類の意匠権を出願していて、その中には多くのデザインが含まれるのですが、”ノッチ”ディスプレイもその1つとして出願されています。またその他の国産メーカーもその前後に似たような意匠登録を出願しています。

OPPOが出願している”ノッチ”デザインの意匠特許

Appleは訴訟を起こすことは可能、しかし実際には行動を起こさない可能性大

IT時報によると、中国政法大学知財権研究センターの李俊慧特約研究員が、「Appleは最初の意匠登録出願の際に同時に”優先権保護”を申請していて、中国国内の意匠登録もアメリカ合衆国と同じとみなされます」としています。つまり、AppleのiPhone Xの意匠特許の中国での保護期間は2016年11月1日からに遡れるということになります。もしAppleが、Androidデバイスが”ノッチ”ディスプレイが意匠権を侵害していると考えたのであれば、それに関する訴訟を起こすことも可能、ということになります。

しかし中国国内では、携帯電話メーカーが外観設計について権利侵害に関する訴訟を起こすことは殆どありません。というのも、「似ているのはパクリとはいえない」という認識があるからです。そして大多数のAndroidスマートフォンが使っているのは、既に存在している異形ディスプレイの意匠特許です。もしディスプレイ部品メーカーが既に異形ディスプレイ意匠特許を取得している場合は、どのスマートフォンメーカーがそのディスプレイメーカーの製品を使用したとしても、自動的に意匠権を使用する権利があるということになります。

更に、Androidの”ノッチ”スマホは、全体のデザインとしてはiPhone Xとは完全に同じではなく、また違った機能を持っていたりするため、それをパクリといったり意匠権の侵害というわけにもいかないというのです。

“ノッチ”は全画面ディスプレイスマートフォンでは今のところ避けられない「必要悪」なデザイン

業界内の人物によれば、今後技術的な突破口でも見つからない限り、全面ディスプレイのスマートフォンにはどうしてもこの”ノッチ”デザインを避けることは難しいそうです。なぜなら、カメラなどは下部に移すと使いにくくなり、どうしても上に置かなければならないからです。そのような事情も、”ノッチ”デザインがパクリともいえず、またそれを訴えたとしてもあまり効果がないという結果をもたらすという結果になりそうです(更に、Appleは技術革新によって2019年からその”ノッチ”を解消するという噂もあります)。ただ、中国のAndroidメーカーの幹部の発言によれば、この「必要悪」という事情がありつつも、AppleのiPhone Xがあそこまで大きな”ノッチ”を残しつつ販売に踏み切り、それが市場に受け入れられるかどうかを見極めるまでは、怖くて販売できなかったという事情もあるようです。

ノッチを使わず、独自デザインを導入するAndroidスマホメーカーも

当然、Androidの全画面スマホにも”ノッチ”デザインを用いない例外もあります。例えば小米MIXなどは、ノッチを用いない独自のデザインを採用しています。

左がiPhone、右がXiaomi MIX。ノッチがないのはわかりますが下の方にやはり少し隙間ができていますね。

またサムスンもフラッグシップモデルで最新のGalaxy S9とS9+では”ノッチ”を採用せず、上部にある程度の隙間を残しています。

またGrowing UpというCMでiPhone Xの”ノッチ”デザインを諷刺する動画を公開するなど、対抗意識を燃やしています。

過去サムスンとのiPhoneの意匠に関する訴訟合戦の苦い経験も

他にAppleが他社を”ノッチ”デザインのコピーで訴えないと考えられる理由として、かつてiPhoneのデザインをコピーしたとしてAppleがサムスンを訴えたときに、最終的にはAppleがある程度の勝利は収めたものの、法廷での争いは長引き、双方共にいいことがなかったという苦い経験も影響するのではないかと思われます。

Apple自身が満足していないデザインのために訴訟を起こすことはないかも?

個人的には、Appleとしてもこの”ノッチ”デザインには満足しているとはいえない、寧ろ”妥協の産物”のはずで、そんなデザインのために他社を起訴するのもおこがましいのではないかと思います。逆に、訴えたらAppleを信奉しているユーザからもツッコミをくらうかもしれません。ただ、それを単にデザインとしてパクるAndroid陣営も更に厚顔無恥に見えますが。。

とはいえ、今やもうスマートフォンは完全に世の中に普及してしまっていて、デザインがパクリかどうかというよりも、顧客が要求する性能を満たす価値があるか、ステータスとなり得るかということの方が大事なような気もします。

記事は以上です。

(記事情報元:cnBeta

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