昨日、縁があって中国広東省深圳市にある世界No.1のシェアを持つドローンのメーカー、DJI(大疆創新科技有限公司、Da-Jiang Innovations Science and Technology Co., Ltd.)を訪問しました。
DJIは商用ドローンでは世界の何と70%ものシェアを持つ業界最大手です。
中国のシリコンバレーと呼ばれる深圳市の西側、ハイテク企業が集まる高新園に、その本社オフィスがあります。今回、ちょっとミッションを持って訪問したのですが、その内容についてはちょっとここでは控え、訪問記に留めたいと思います。ここ数日、久々に用事があり深圳を訪れていたのですが、間違いなく最大のイベントでした。。
▼まずビルの下に着きます。これがビルの下の社名表示。右の表示に、1つだけ。。14〜24階、全部DJIです。すごい。。圧倒的存在感。
▼14階の受付。とても質素で清潔なイメージ。かっこいい。。階下の受付だけではなく、こちらでもアポイントメントの確認をとります。
▼14Fの受付に入ったところでいきなり大きなスクリーンで、ジェスチャーで操作可能な最新版のデモ映像が。
まずは会議室に入りましたが、すぐに製品の説明をしたいということで、ショールームに連れて行ってもらいました。
▼DJIといえばこれ、、ということでまずは民生用のファントム(Phantom)シリーズから解説が始まりました。
▼以下は順不同ですがファントムの展示です。DJIは今でこそ世界シェアNo.1ですが、最初はラジコンヘリマニアの汪滔(”Frank” Wang Tao)社長を中心とする仲間と殆ど学生の遊びのようなものから始まったそうです。ラジコンヘリの形状から4つのプロペラを持つ形状にデザインが変わったことが、ドローンの成功の秘訣だったのかもしれないですね。また最初の方のPHANTOMは下の写真のように、GoProなどアクションカメラを別途装着するタイプ(上の写真参照)でした。DJIは当初ドローンのみの製造に集中していたのですが、その後、ドローンでの映像撮影という用途に集中するため、自社でカメラを開発してつけるようになったとのことでした。
▼前述の通り、DJIはその後映像・画像撮影用のドローンに特化することでそのシェアを伸ばしていきます。姿勢制御、障害物検知センサーによる衝突防止、流線型の導入による速度向上など、毎年かそれ以上のペースで製品の改良を重ねて機能を追加していき、現在はほぼ機能の向上が限界というほど洗煉されています(これ以上の機能追加はバッテリーによるボトルネックで不可能なのかもしれません)。いずれにせよ、ファントムは2011年から2016年まで、5年で劇的な進化を遂げたといえます。
▼タッチパネルで操作ができるインターフェイスも自社開発。ちなみに、カメラのレンズ以外の部品は、モーターも含め自社開発・自社製造製品なのだそうです。
▼折りたたみができてコンパクトな民生タイプ、SPARKも。
ここからは、あまり見たり触ったりする機会はあまりないと思われる商用やプロ向けドローン(当然お値段の高いもの)の解説となります。
▼まずはMavic Pro。かなりコンパクトになりますね。衝突回避システムもついてます。
▼Inspire 2。飛ぶときには足の部分が少し上にあがります。着地の際はそれがゆっくり降りるというこだわり。
▼地形データ収集のために特化したM200シリーズ。距離を測定しつつ、撮影というようなことができます。
▼こちらは農業用ドローン。農薬散布が可能です。スタートとゴールを決めておけば、あとはジグザグに動いて散布してくれるそうです。
▼電線塔などの定期検査に使うためのドローン。2本の足が壊れても飛ぶことができるそうです(隣り合っていなければ)。
▼DJIゴーグル。実際に飛んでいるような臨場感を味わえます。こういうのも、全部自社でやってしまうのがすごいですね。
▼そして極めつけはこれ。RoboMasters Robot。販売はしておらず、ロボコンに参加する、ロボティクスを学ぶ優秀な学生達に寄付し、カスタマイズを可能にしているとのこと。これはぜひ欲しいー!ですが、やっぱり売ってくれないそうです。笑 ロボコンでの勝負もエキサイティングですが、実際の用途としては、人間が到達するのが困難だったり、危険な場所での作業などに役に立ちそうですね。
▼こんなカメラの位置とぶれを補正するための道具も。これもドローンの姿勢制御システムの経験を活かしてのことでしょう。しかし英語名がRonin。。またカメラの名前がOSUMOだったり、ネーミングが面白いですね。ギーク臭、オタク臭を消していないところもさすがという感じがします。ちゃんと中国語の漢字の名前があるのも、さすが中国国産メーカーといえるでしょう。中国人も、自国のメーカーということで誇りに思っています。
▼ロボットの歴史がパネルにまとまっていました。興味深い。。。そして最後の方に、もちろんDJIが入っています。日本のASIMOやセラピー用あざらし型ロボットParoなども入っていますね。そしてこれからはますますロボットが我々の身近に存在するようになっていくのでしょうね。
その後会議室に移動し、色々な話をしました。1万人の社員のうち、半分が製造で半分がR&D(研究開発)だそうで、ものすごくものづくりと研究開発に人員を割いていることがわかります。飛行時間の延長や、雨を防ぐのが今後の課題のようでした。社長も非常にこだわりの人で、その時点で本当にいいものでないとリリースしない、という方針のようです。デザインも洗煉されており、ますます一人勝ちの状況は続くでしょうね。
今後、ドローンを使った配達・輸送の分野が発展していくと、街中にドローンが溢れる時代が来るのかもしれませんね。
DJIのドローンは決して安くはなく、また同じ深圳の世界最大の電子機器市場華強北では、その他のドローンメーカーが林立してDJIよりずいぶんと安価なドローン販売を展開しています。しかしやはり世界一のDJIだけは品質的にも機能的にも別格ですね。これも1つの、パクリ(山寨)だらけの中国・深圳だけではなく世界の市場で生き残り勝っていくための1つのやり方です。DJIは正に追随者に真似できない、実装の優れた要素を追求する非常に”悪魔度”が高い製品を創って差別化している、といえるでしょう。
※ちなみにこの”悪魔度”については、東京大学の暦本純一教授の定義による”天使度”と”悪魔度”から。もとは映画監督の黒澤明さんの「悪魔のように細心に!天使のように大胆に!」からきている言葉で、アイデアの優れた要素を”天使度”、実装の優れた要素を”悪魔度”、と定義しています。
天使度が高い製品は、「思いつきは素晴らしいが作るのは簡単」、そして悪魔度が高い製品は、「誰でも思いつくが、実際に創るのは難しい」というものです。そして後者の方が、パクられにくいといえます。
日本にもDJIの代理店はありますが、やはり本家本元の深圳本社は違いますね!今回本当に縁があって社内を訪れる機会をいただけたことに感謝です(ビルの下にセキュリティがあるので、社内展示ルームに誰もが入れるわけではありません)。あまり細かいことがいえず申し訳ないのですが、ぜひいつかはもともとラジコンヘリマニアで、香港中文大学を出た超エリート社長、汪滔さんとお話ししてみたいです。
DJIのドローンに興味をお持ちの方。。日本にも代理店があって正規に購入することができます。飛ぶ場所を選ぶドローンですが、他のドローンには真似できないカメラ撮影が可能ですよ。
▼PHANTOM(ファントム)4はこちら。コントローラもセットで。
▼DJI SPARKはこちら。DJIのドローンの中でも最もリーズナブルですが、性能は抜群です。
▼時速64kmで飛行可能なMavic Pro。4Kでの撮影と、衝突回避システムも搭載しています。さすがプロユースですね。折りたたむとコンパクトに。
ところでこの記事はNewsPicksでもとりあげられ、それなりに反響もありました。
が、こんなコメントをされている方がいらしたので、当方も追記としてちょっとコメントを。。
神農 亮さん(存じ上げませんが)からはずいぶんな言われようですね。。ありがとうございます。
この記事を書くに至ったDJI訪問ですが、私の場合、3段落目にも書いている通り、もちろんただ訪問しただけではありません(神農さんはたぶんそこ読んでなかったと思います)。
ちなみにこの本社内部14階のショールーム自体、普通の来訪者は入れず、DJI社員が持つIDカードがないとまず上がれません。
それに、DJIは今や世界一の商用ドローンの会社なので、遊びに来た人を相手にするほど暇ではありません。そういう人は、外部のショールームに案内されて終わりです。私の場合は、DJI社長の同級生である親友に紹介してもらって内部まで入れたのです。そして、上記の訪問のミッションは、実はとある日本の製造業系の大企業の方をお連れするためでした。実際にDJIの偉い方と現場で色々と有意義な話ができたのですが、それについてはさすがに書くわけにはいかないので、ここには書いていないだけです。一応、追記として記させていただきます。
記事は以上です。