ブルームバーグ(bloomberg)の最新の報道で、取引を知る関係者からの情報として、ドイツのロバート・ボッシュ社がAppleの次世代iPhone【iPhone 8(iPhone X、iPhone Editionとも)】及び【iPhone 7sシリーズ】のモーションセンサーの半数の受注を獲得したという。これは、ボッシュ社が次世代iPhoneのモーションセンサーモジュールの主要サプライヤーになることを意味している。
これまでiPhone SE、iPhone 6sシリーズ、iPhone 7シリーズと最近販売された三世代のiPhoneには、カリフォルニア州に本部を置くインベンセンス(Invensense)社がジャイロスコープと加速度センサーを受注してきたが、Appleは次世代iPhoneのiPhone 8/7sではボッシュ社に半分ほどのセンサー部品の発注をしたとみられている。なおこの件はインベンセンスがTDKに13億ドル(約1460億円)で身売りを完了させようとしたタイミングで起こったようだ。インベンセンスのTDKへの身売りもAppleとの取引拡大を狙っていただけに、インベンセンスは大打撃を受けたとみられ、4日の時間外取引で株価も5%下げている。
ボッシュ社は既に従来のiPhoneに気圧センサーを受注してきた。しかし上記の新しい取引状況を見ていると、Appleはやはり部品・部材購買政策(ポリシー)の中に少なくとも2社以上から購買するという原則があるようで、それに従って行動したということになろう。そして2社以上の複数社調達によって、Appleはサプライヤーを競争させることでコスト的にも品質的にも優位な交渉が可能になる。
ただし複数社からの調達によってコストや品質の競争をさせることで有利な購買が可能になる、というのはもちろん一般論であって、私も購買・調達業務を10年以上やってきたが一概に100%そうなるわけではない。実際に1社しか条件を満たさない場合や、原材料や工場のラインを抑えるために1社にまとめて発注を出すこともある。事実、iPhone 8の有機EL(AMOLED)ディスプレイはサムスン(SAMSUNG)1社(しかもにっくきライバル)からの調達になるといわれているし、同じく次世代iPhoneに搭載されるといわれているA11チップもTSMC社1社からの調達になるようだ。そこはやはりバイヤーの目利きと現実の状況判断に委ねられるところもあるだろう。
なお、この件についてApple、ボッシュ社、インベンセンス、TDKの全ての関連会社がコメントを控えている。
ちなみに、iPhone 6sより前、iPhone 6までの加速度センサーとジャイロスコープ(iPhone 4から搭載)は、STMicroelectronics社が受注していた。インベンセンス社もiPhone 6sから一気に切り替えられたことになる。Apple一辺倒、またAppleが100%発注を出しているところは怖いというのはこういうところにあるのだろう。TSMC社も再来年からは100%メインプロセッサを受注できる保証はなく、常に針のむしろに座っている気分なのではないだろうか。
記事は以上。
(記事情報元:bloomberg)