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iPhoneで使える「5G」には2種類ある!それぞれの特徴と違い、実際の速度とは

次世代通信規格として注目されている「5G」通信。既に一部の国では2019年から試験的に4Gから5Gへの切り替えが始まっていますが、現在もまだ世界的に普及している状況とは言い難い状況です。

皆さんの頭の中の5Gってこんな感じでしょうか?

我らがAppleのiPhoneも、次世代「iPhone 12シリーズ」は5G対応が目玉機能とされていますが、既に韓国・中国国産ブランドをはじめ世界的には既に5G対応のスマートフォンが販売され始めています。特に中国産の5G対応スマートフォンは廉価なものも多く、いよいよハードウェア的には5Gは身近なものになってきました。しかし、実際にその速度向上の恩恵にあずかれている人はごくわずかといわれています。

そして当ブログでもお伝えした通り、iPhone 12シリーズでは、最高機種の一部の国で販売されるもののみ「速い5G(mmWave、ミリ波5G)」に対応していて、その他は「遅い5G(サブ6GHz-5G)」にしか対応していないことが噂になっています。

iPhoneに搭載される5G通信用のモデムチップ(ベースバンドモデムチップ)はQualcomm製とされていますが、その中でも対応する電波規格が違うとはどういうことなのでしょうか。MacRumorsが主に米国の状況をまとめているので、意訳も含めて紹介します。

「速い5G=mmWave」と「遅い5G=Sub6GHz」の違いとは

まず「5G」とは第5世代のセルラー無線通信規格のことであって、2010年登場以来続いてきた「4G(LTE)」ネットワークを継承するものです。

5Gネットワ​​ークには次の2種類があります。

  1. mmWave:ほとんどの人が「5G」「次世代通信」と聞くと想像されるような、また5Gを紹介する動画などで見られるような、大きく鮮明な動画やVR/ARなどの膨大なデータを瞬時にダウンロード可能な「超高速次世代通信」を表しています。日本語ではミリ波とも呼ばれます。
  2. Sub-6GHz:上記のmmWaveにはほど遠いものの、現行の4Gよりは速い速度が出る規格で、殆どの人が今後当面「5Gだ」とされながら経験するのがこちらになります。

スマートフォンなどの無線通信機器は、無線周波数を使用して音声とデータを無線で送受信します。これらの周波数は、非常に多くの異なる周波数帯域(バンド)に分かれて構成されていますが、これらのバンドのうちいくつかは、他のバンドよりも容量が大きく、上記のmmWaveのように、情報をより速く配信することができるのです。

超高速5Gの「mmWave」は、24GHzから40GHzまでのより「高い」周波数の無線帯域のことを指し、「Sub-6GHz」は6GHz未満の中低周波帯域のことを指します。低周波数帯域とは1GHz未満のことで、中周波数帯域とは3.4GHz〜6 GHzの範囲のことです。

「mmWave」を使用した5Gネットワ​​ークは超高速なのですが、伝送可能距離が超短距離という大きな欠点があります。mmWaveテクノロジーを使用するには、5G基地塔(5Gタワー)のブロック範囲内にいる必要があります。つまり、郊外や農村地域などタワーが近距離に建設できない場所では実現不可能であることを意味します。また「mmWave」で使用される「ミリ波スペクトラム」は、ドア・窓・木・壁などによっても容易に遮られるため、利用可能な範囲がさらに制限されます。そのため、広範囲をmmWaveでカバレッジするためには非常に多くのmmWave 5Gタワーが必要になるため、キャリアによるインフラ整備には非常にコストがかかってしまうのです。

ミリ波スペクトルの伝送可能範囲が非常に限られているため、これまでMassive MIMO・可変ビームフォーミング・複雑なアンテナ処理機能やアンテナの小型化などの技術的進歩により、ここ数年の間にやっとある程度実現可能になっただけであって、mmWaveは実はまだ発展途上の技術のまま採用されたことになります。

更にmmWave 5Gでは大きな帯域幅が提供されるため、ネットワークの輻輳が緩和されることは注目に値します。4G LTEでは、接続するデバイス数が多くなったことが原因で通信速度が遅くなりますが、mmWaveテクノロジーでは、接続デバイス数が多くても、速度を大幅に低下させることなく、より多くの接続を処理できます。そのため、スポーツイベント・空港・コンサートなど、多くの人が集まる場所や都市部など、ネットワークの混雑が問題となる混雑したエリアでは、「mmWave」が非常に有利になるため、設定が検討されやすいのです。

というわけでmmWaveは伝送可能距離が制限されているため、密集した都市部や、空港やコンサートなどの特定のターゲットスポットには最適です。逆に地方や郊外の地域では、mmWaveテクノロジーは広範囲をカバーするのに十分な5Gタワーを建てることができず、実用的ではありません。

そこで、Sub-6GHz 5Gネットワークが登場したのです。このSub-6GHz 5Gは4Gより高速なのですが、驚くほど高速というわけでもありません。ただしmmWaveよりも射程が長く、物体をよりよく貫通できるため、キャリアが基地局を実装するのに、mmWaveよりもはるかに手頃な価格で済むのが特徴です。

mmWaveとSub-6GHzの両方をサポートするiPhoneを使用すると、mmWaveテクノロジーが利用可能な場合は非常に高速な5G速度を利用できますが、それ以外の地域では、ここ数年は現在展開されているLTEネットワークと同様か少し速い程度での速度となります。Sub-6GHzのみに対応した‌iPhoneを使用すると、最も広く利用可能な5Gネットワ​​ークを使用できますが、都市などで利用可能な高速のmmWaveには接続することができません。

今後時間が経つにつれ、Sub-6GHz(低周波数と中周波数)5Gの速度は、LTEがかつて進化したのと同じように今よりはるかに速くなるとは思われますが、人々が「5G(次世代通信)」という言葉から期待するのはやはりmmWaveの速度といえるでしょう。しかしこのmmWaveの可用性はSub6-5GHzに比べはるかに制限されてしまうのです。

mmWaveとSub6GHzの実際の速度の違い

それでは、mmWaveとSub-6GHzには上記のような違いがあることがわかったとして、実際にはどれくらいの速度の差があるのでしょうか。

mmWaveは、5Gb/秒という理論上の速度が提供されるといわれています。これは、LTE接続で達成可能な速度よりもはるかに高速です。

実際には、初期のmmWaveネットワークでは約2Gb/秒で最大速度を提供してきましたが、 2019年中頃にシカゴでSamsungの5G対応スマートフォンを使用してVerizonのmmWaveネットワークをテストしたとき、mmWaveでの接続速度は、最寄りの5Gタワーからの位置と近接距離に基づいて大幅に変わることが判明しています。

それに比べ、現行のLTEネットワークははるかに低速です。Tom’s Guideが実際に最近のLTE速度を調べたところ、米国Verizonでのダウンロード速度が53Mb/秒であることがわかりました。そして他のほとんどのキャリアは35Mb/秒に近く、それほど速くありません。もしかしたら、5Gの登場によってLTEの速度を下げて、5Gへの移行を促そうとしているのではないか?と疑われるレベルです。ちなみに私が中国深圳で2013年頃に測定した数値では、100Mb/秒近く出ていました。

サブ6GHzネットワークは、mmWaveとLTEの速度の中間にあります。たとえば、SprintのSub-6GHzネットワーク(現在はT-Mobileのもの)の最大速度は約200Mb / sです。優れたLTE接続はこれらの速度に達する可能性がありますが、現実的には、サブ6GHz 5Gは、ほとんどの人がLTEで見るよりも高速ですが、mmWaveで可能な驚くべき速度には達していません。

OpenSignalは、2020年8月に現在5Gをサポートしているスマートフォンを使用して複数の国で実際の5G速度を分析しました。米国の速度結果は5Gからの大幅な速度の向上を期待している人には驚くかもしれません。5Gネットワークの平均ダウンロード速度は、LTEの28.9Mb/秒と比較して、約50.9Mb/秒でした。これは、現時点では米国のほとんどがSub-6GHzが採用されているためです。

米国外の他国では、より高度な5Gネットワ​​ークを使用しており、今後数年以内には速度改善が現実的に行われるとみられています。OpenSignalは、平均して5G接続が4Gよりも1.4倍から14.3倍高速であるとしていますが、このデータでは、5GにおいてmmWaveとSub-6GHzの区別をしていません。

OpenSignalが指摘したもう1つの興味深い測定基準は、5Gネットワ​​ークへの「接続時間」でした。米国では、5Gをサポートするデバイスを所有しているスマートフォン所有者は、可用性が限られているため、5Gネットワ​​ークに接続している時間は全体のわずか19.3%でした。つまり、5GはSub-6GHzでもまだまだ普及していないといえそうです。

最近5G iPhoneを(内密に)テストしているAppleの従業員は、ブルームバーグに対し「現在の5Gネットワ​​ークは接続速度を大幅に向上させていないため、5Gの速度には失望している」と語っています。iPhoneが超高速のmmWave速度を提供することを期待しているほとんどの人は、mmWaveネットワークがほとんどの場所で利用できないことに気づいたときに、同様に失望する可能性があります。

日本でも同様な状況に。。mmWaveを使える環境は限られる

上記は米国の場合が強調されていますが、日本でも2種類の5Gの仕組みや経済構造が同じである以上、似たような状況になる可能性があります。

今回噂では最高峰で最大6.7インチのiPhone 12 Pro Maxの、米国・日本・韓国版のみmmWave 5Gに対応しているとされていますが、日本でそのモデルを購入したとしても、mmWave 5Gがカバーされている範囲が恐らく東京の都心などの人口が密集している地域に限られる可能性が高く、恩恵を受けられる人は限られているといえます。また、その速度を使って一体何ができるのか、まだそこまでの速度が必要なサービスが出ていないのも事実です。

少なくともここ数年、5GはSub-6GHzを中心に展開され、限られたごく一部の区域でmmWaveが設置されることになるでしょう。またSub-6GHzは今後、基地局が増えていくことでこれまでのLTEと同様、速度が改善されていく可能性があります。

記事は以上です。

(記事情報元:MacRumors

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