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iCloudの中国アカウント運営提携先が2月末から中国国内企業GCBDに変更。中国在住者のリスクの捉え方とうまい回避方法とは

4日ほど前に、私の中国用iCloudアカウントのメールアドレスに、2018年2月28日からiCloudの運営提携先企業がGCBDに変更となるという通知メールがAppleから届きました。しかも丁寧に日本語に訳されています(ただしリンク先の規約などは日本語化されておらず、英語です)。Appleはこの通知の中で、iCloudの運営会社がGCBDに変更されることで、iCloudのスピードと信頼性を引き続き向上させ、また、中国の規制を遵守することが可能になる、とされています。

iCloud中国アカウントとは?

中国(大陸)国内に地域が設定されたiCloudアカウントのことです。iCloudアカウントはApple IDと紐付けされていて、App Storeなどで中国用のアプリケーションを使う場合は地域を中国(大陸)に設定しないといけません。その場合、iCloudのデータも中国(大陸)の地域設定に従って管理される、というわけです。

 

GCBDとは

まず、提携先が中国国内企業のGCBDに変更されるとのことですが、GCBDとはGuizhou on the Cloud Big Data Industrial Development Co., Ltd.のことで、中国語では云上贵州(雲上貴州)です。もともと中国国内でBtoBのクラウドサービスを提供している会社で、今回のAppleとの提携でかなりの収益を上げたものと思われます。

Appleとしても、GCBDからビッグデータを得ることで、中国での販売や、製品やサービスの開発に役立てることができると判断して提携したものと思われます。

 

GCBDに運営が移管されることで何が変わるの?

冒頭に書いたとおり、AppleはGCBDにiCloudの運営が移管されることで、iCloudのスピードと信頼性を引き続き向上させ、また、中国の規制を遵守することが可能になる、としています。

まず、中国国内(大陸・本土)ではAppleのデータダウンロードが非常に遅かった過去があります。それは、かつてAppleのサーバが全て国外にあったからです。最近は中国国内にもサーバが設置され、ほぼ解消されていると思いますが、それでもiCloudのデータ転送やiOSシステムダウンロードなどはスピードが遅くなることがあります。それがGCBDの運営管理に変更されることで、改善されることが予想されます。

また中国はネットサービスの使用に規制を設けていることは広く知られていて、本来中国に住んでいる人はそれを遵守する必要があります。しかしそれによって、プライバシーやセキュリティに関するリスクが発生するとも考えられます。

というのも、中国(大陸)では、当局の要請があれば、データを開示しなければなりません。中国国内企業の経営は全て政府の許可制となっていて、もしそれに従わなければ当局により即刻運営がストップさせられることから、中国国内企業はユーザのプライバシーよりも当局の指示を優先する可能性が高い、つまり「中国政府は何らかの合法的な理由があれば、恣意的にユーザのデータを取得することができる」という状態になってしまうことがリスクと考えられます。

中国はネット規制と検閲をしていることで知られていて、前者は言論統制と中国国内企業の世界的競争からの保護が目的で、後者は社会の安全のためと言われていますが、いずれにせよ中国国内企業にデータの管理を任せると、政府にデータが筒抜けになるというイメージが拭えません。

 

中国本土に住む中国市民でない人と、中国市民では対応が変わる

中国本土に住む中国市民でない人(=外国人または香港・マカオ・台湾籍の人)は、iCloudの地域設定を中国(大陸)ではないところに変更するか、iCloudの使用をやめることで、iCloudのデータ管理を中国国内企業であるGCBDに変更することから逃れることができます。しかし中国本土に住む中国市民は、もしGCBDに変更されることを拒絶するのであれば、iCloudの使用をやめなければいけません。

ここに対応の違いがあり、中国本土に住む中国市民はiCloudのデータ管理がGCBDに変更されることを受け入れるか、iCloudの使用をやめるか、その2つしか選択肢がないことになります。

 

またもやセキュリティやプライバシーに関する考え方で論争に

中国のテック系の掲示板では、今回のAppleの挙動について、セキュリティやプライバシーについて熱い論争が交わされています。

Appleはこれまで、個人のデータが入った端末のロック解除をFBIから要求されても、その端末が例え大量無差別殺人(テロ)の犯人の所有物であっても解除することを拒否したことがあります。またFBIに要求されても、端末に搭載されているiOSへのバックドアを設置することを拒絶しています。また同社はiCloudのデータセンターにおいても、バックドアは過去・現在・未来において仕掛けないことを明言しています。それによって、Appleは例え国家の行政機関の要請があったとしても、個人のプライバシーの方を優先して保護する、という態度と姿勢を示したわけです。

しかし本来日本でもアメリカでも同様に、iCloudのアカウントが犯罪に使われた場合などはデータの提出は裁判所やその他当局(公安や警察、FBI・CIAなどの諜報機関)からの開示要求があれば、データを開示しなければならないのは変わりがないことです。Appleは中国のGCBDも個人のデータにアクセスすることはないとしていますが、実際にエドワード・スノーデン氏のこれまでの機密文書開示によれば、アメリカでもFBIやCIAなどの諜報機関によって、巧妙に通信の傍受や検閲が行われていることが明らかになっています。

となれば、中国であろうと他の国であろうと、そもそもデータをインターネットのクラウドサーバにアップロードすること自体にリスクがあることは認識しなければなりません。

ただ、犯罪に加担したり、何か機密のデータでもない限り、それほどプライバシーで重要なデータってあるのだろうか?と思うのです。確かに、居住地や家族や子供の情報、所有している資産やクレジットカードなどの情報が他に漏れたりするのはやはり怖いな、という気もしないではありません。とはいえ、現在中国では誰もがそういったデータに触れることができるわけではありません。中国の公安(警察)内部でも、かなり特別な権限がなければ個人情報のうち詳細情報にアクセスできないように、ここ1年ほどでシステムが変更されています(中国の公安内部の友人からの情報)。

また、中国ではある程度のプライバシーと引き換えに、安全が保障され、更に信用情報が共有されて安心という考えが一般化され普及していて、これは私も中国暮らしが長いので納得できます。今や、中国ではネット決済で何を買っても足がつきますし、長距離を移動しようとしても国内でも本人認証が必要です。指名手配された人などは何か公共サービスや私営のサービスを受けようとしても本人名義では何もできない上に、街中のありとあらゆるところに監視カメラが設置されているので、悪事を働けないか、悪事を働いても逃げられないのが現状です。そしてもし捕まった場合は日本では信じられないような極刑が待っていて、それが即刻執行されたります。ようは、中国の現在の状態では、悪いことでもしない限り、とても安心で安全な、信用が重視される社会が築かれているように思えるのです(まだ途上ですが)。

もちろん、中国政府の方針が急に軍国主義のように変わった場合は、恣意的に国民監視のシステムを利用されてしまうわけで、そうなった場合は本当に怖いとは思いますが、恐らく暫くはそのように変わることはないと思います。というのも、中国はただでさえ人口も多く、領土も広いため、正直内政だけでも手一杯だからです。

これについてはたぶん私の考えも中国歴が長いため偏っているのかもしれませんが。。皆さんはどうお考えでしょうか。

 

中国本土に住む日本人など外国人は、2月28日までに決断を。アプリのみ中国アカウントを使用する手も

いずれにせよ中国本土に住む日本人など中国市民ではない人で、iCloud(=Apple IDアカウント)の地域設定を中国にしている人は、2018年2月28日までにそれを変更することで運営会社をGCBDに変更することから逃れることが可能です。その代わり、中国国内専用のアプリなどはダウンロードができなくなります。

私自身は銀行・金融関係アプリや、その他の中国国内専用アプリが便利な上で必須で、最新版も使いたいので、App Storeでのアプリのダウンロードに関してのみ、引き続き中国アカウントも使用し続けたいと考えています。中国国内用のApple IDサブアカウントを作ることでそれが可能となります。そしてiCloudそのものはメインの日本アカウントを使用すればよいかと思います。外国人や、海外にApple IDを持てる人にはそのような選択肢も残されています。

記事は以上です。

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