オーストラリア連邦裁判所は現地時間10月21日、Epic Gamesが起こした訴訟で、Appleに対してiPhoneをサードパーティーのアプリストアやWebサイトからのアプリ導入、Apple以外の決済へ開放するよう命じました。期限は2027年3月1日で、対象はオーストラリアのAppleアカウントを持つユーザーです。日本ではスマートフォンソフトウェア競争促進法によって2025年12月18日からApp Store以外の代替アプリマーケットプレイスが使えるようになっていますので、Apple以外への開放自体は日本の方が1年以上先行しています。ただし今回の命令は、他社ストア経由の売上にAppleが手数料を取ることを禁じている点で、日本やEUの現状より一歩踏み込んだ内容となっています。
2027年3月1日から、オーストラリアのアカウント向けに
9to5MacとGSMArenaによると、判決を出したのはジョナサン・ビーチ判事で、判決文([2026] FCA 1552)は235ページに及びます。同じ判事が2025年8月に、AppleがiPhoneのアプリ配信と決済を自社に縛っていた行為を競争・消費者法違反と認定しており、今回はその違反をどう是正させるかを決めた救済段階の判決ということです。Appleに命じられた主な内容は次のとおりです。
- サードパーティーのアプリストアと、WebサイトからのiPhoneアプリの導入を認める
- App Storeで配信するアプリの中でも、Apple以外の決済と外部サイトへの決済リンクを認める
- 他社ストアが動くために必要な開発ツールやAPIを、App Storeの開発者と実質的に同じ条件で提供する
- 他社ストア経由の配信や、そこで行われた決済に手数料を課さない
- 開発者に対して、Apple決済を併記する義務や、他社決済の取引を報告する義務を課さない
- Fortniteを含むEpicのアプリをオーストラリアのApp Storeへ戻す
期限は2027年3月1日ですが、9to5Macによると、Appleは2027年2月15日までに申請すれば、裁判所の承認を条件に5月3日まで延期できます。一方で、Epicが求めた世界全体への適用は退けられました。Appleは他社ストアで配信されるアプリに対しても公証(マルウェアなどの基本審査)を続けることが認められており、競合ストアを自社のApp Storeに並べる義務も免除されています。訴訟費用については、Epicが一審で使った費用の85%をAppleが支払うよう命じられました。
日本はすでに解禁済み、違いは手数料とWeb配信
日本のiPhoneは、2025年12月12日配信のiOS 26.2で、Appleの承認を受けた代替アプリマーケットプレイスからアプリを入れられるようになっています。Appleが公正取引委員会に提出した遵守報告書では、2026年3月31日時点で承認済みのマーケットプレイスは6つだとgori.meが伝えています。AltStore、Aptoide、Onside、DMM GAMES STORE、BBSSとAptoideのApp Arena、そしてEpic Games自身です。つまりEpicは日本では既に自分のストアを持っていて、Fortniteも通常のApp Storeに並んでいます。オーストラリアで今回やっと認められたことの大半は、日本の利用者には既に手元にある状態だということになります。
違いは手数料の扱いにあります。Appleの日本向け開発者ページによると、日本では代替マーケットプレイス経由で配信したアプリの有料販売やアプリ内課金に、売上の5%のコアテクノロジー手数料がかかります。App Storeで配信するアプリがApple以外の決済を使う場合は21%(Small Business Programなどの参加者と2年目以降のサブスクリプションは10%)、外部サイトへの決済リンクは15%(同じく10%)となります。Appleのアプリ内課金をそのまま使えば21%に決済処理の5%が乗って最大26%となります。正直相当ぼったくっているよなあと思います。
一方で、オーストラリアの命令は、他社ストア経由の売上には手数料を課さないと定めています。App Store内のアプリでApple以外の決済を使う場合の手数料は、Appleが実物の商品やサービスの決済に課している料率を上限とし、デジタル配信に固有の実費だけ上乗せできる、とSMBtechが伝えています。実費の上乗せが認められるため、App Store内の他社決済まで一律に手数料ゼロになる命令ではありません。
もう1つの違いはWebサイトからの直接配信です。MacRumorsによると、日本の法律にはEUのように開発者のWebサイトから直接アプリを入れる選択肢が含まれておらず、Appleが承認したマーケットプレイスを経由する形に限られています。オーストラリアの命令はWebサイトからの導入も含んでいますので、仕組みとしてはEUに近く、手数料ではEUより厳しい形です。当ブログでもお伝えした通り、EUでもApp Store外で配信したアプリのデジタル売上には5%の手数料が残っています。
SMBtechによると、ビーチ判事は韓国とオランダでAppleが他社決済に26〜27%の手数料を設定した例を挙げ、競争の芽を摘むために料率を決めていると評しています。日本の21%は韓国より5〜6ポイント低いだけで、構造は同じです。オーストラリアの裁判所は、他社決済を認めさせるだけでなく、Appleがそこに課す手数料にも上限を設けたということです。
Fortniteに復帰命令、Appleは控訴へ
MacRumorsによると、Fortniteは2026年5月に世界のApp Storeへ戻った際、オーストラリアだけが対象から外れていました。Epicが決済条件に関する追加の命令を待っていたためで、今回の復帰命令はEpicの書面による申請があれば直ちに効力を持ち、2027年3月の期限を待たずに実現します。Epicは10月22日、FortniteをオーストラリアのApp Storeへ戻すと表明しています。
Appleは9to5Macが引用したReutersへの声明で、執行停止を申し立てたうえで控訴し、自社の知的財産を尊重する解決を求めるとしています。Epicは「世界中の開発者と、オープンなアプリ環境の恩恵を受けるオーストラリアのiOSユーザーにとって素晴らしいニュースだ」とコメントしました。
なお、同じ2025年8月に並行の訴訟で違反を認定されていたGoogleは、Capital Briefによると今年3月にEpicと和解しています。今回の命令の対象はAppleです。当ブログでもお伝えした通り、EpicはブラジルでもAppleが当局との合意を骨抜きにしていると申し立てており、米国・EU・ブラジル・オーストラリアと、同じ喧嘩が国ごとに続いています。
小龍的にはこう思った
日本のiPhoneユーザーにとって、今回の判決で明日から変わることは何もありません。対象はオーストラリアのAppleアカウントですので、日本のアカウントのままオーストラリアへ渡航しても、今回の命令による開放の対象にはなりません。Appleは執行停止を申し立てる方針ですので、2027年3月1日の実施に影響するかは裁判所が停止を認めるかどうかによります。
それでも小龍的には、この判決は日本の開発者に関わってくると考えています。SMBtechの報道からは、知的財産を持っていることを理由に、競合する配信や決済を締め出す行為を正当化するというAppleの主張を、例えオーストラリアであろうとも、裁判所が退けた前例ができたことは大きなことです。
日本では法律の施行から10か月が経ちましたが、代替マーケットプレイスを使っても5%、App Store内で他社決済を使っても21%という手数料は残っています。オーストラリアで手数料ゼロの他社ストアが実際に動き、Appleが主張してきた安全性の問題が起きるのか起きないのかが見えれば、日本の公正取引委員会が料率に踏み込むかどうかの判断材料にもなってきます。実は将来的に日本のユーザにも影響するできごとかもしれませんね。
記事は以上です。
(記事情報元:GSMArena、9to5Mac、MacRumors、Federal Court of Australia、Apple Newsroom(日本)、Apple Developer)
| AppleとEpic Gamesの喧嘩の舞台が、今度は【ブラジル】に移りました。EpicがブラジルのCADE(経済保護行政委員会。競争当局です)に申し立てを行い、Appleが当局との合意を「構造的・技術的・アクセス面の障壁」で骨抜きにしていると訴えたのです。CADEはAppleに月曜(現地時間8月24日)までの回答を求めています。EUで手数料の全面改定が決まった、そのわずか数日後の出来事です。世界中の当局が、同じ1台を囲んでいる。そういう構図です。画像はイメージです。ブラジルで何が起きているのか前提を整理します。ブラジルではCADEとの合... 【今度はブラジル】Epic、「Appleは当局との合意を骨抜きにしている」と申し立て。EU・米国・中国、世界中で同じ喧嘩が続いている - 小龍茶館 |
| Appleが【EUのApp Store手数料】を全面的に組み替えると発表しました。8月18日付の開発者向けアナウンスで、1インストールごとに徴収していたCore Technology Fee(CTF)を廃止し、代わりにApp Storeの外で配信したアプリの売上に5%をかける形へ変わります。適用は10月1日から。欧州委員会との協議を経たもので、デジタル市場法(DMA)をめぐる長い揉め事に一区切りをつける内容です。アプリ内課金と外部サイトへの誘導が並ぶイメージ。画像はイメージです。新しい料率はこうなりましたAppleが示した新しい条件を整理すると、次のよう... 【中国の25%より高い26%】Apple、EUのApp Store手数料を全面改定。1インストール0.50ユーロのCTFは廃止へ - 小龍茶館 |
