Apple Store(アップルストア)はAppleの直営小売店のこと。アメリカだけでも265の店舗があり、1店舗には100人ほどのスタッフがいる、ということは全部で2万5千人ほどのスタッフが働いていることになる。そのネットワークはアジアを含む世界中に拡がりつつあり、世界最高益を出している会社の直営店の素晴らしさはスタッフによって支えられている。
そしてそんな素晴らしいスタッフ達には、たぶんこれまであまり知られていない多くの秘密があった!
海外メディアのmental_flossが15の項目にまとめているのでご紹介。
1. お客様にパスワードを覚えていて欲しいと思っている
Appleの従業員がお客様と接していて最も嫌だと感じるのは、お客様が自分が設定したデータや情報について全く覚えていないことだ。Apple Storeに5年半勤務しているとあるスタッフはこう語る。「多くの人がストアに入ってくるなり”パスワードを調べてくれ”というのです。だったら何のためにパスワードがあるのですか?と聞きたくなります。そんなわけで、お互いの時間の節約のために、ご自身のアカウントのログイン情報を確認されてから、お店に来てもらいたいのです」
2. 顧客が店内の端末で自分の仕事をやるのが嫌い
フロリダ店のスタッフ、Ericさんによれば「お客様は店内のデモ機で電話をしようとしたり、壁紙を勝手に変更したり、自分の友達と2時間もチャットしたりします。ある人などは、自分のアルバムのために店内のマシンで作詞をしていました。」
お店の中で自分の用事をこなすのはもちろんよくないことだが、もしどうしてもやらなくてはいけなくなった場合は自身のFacebookなどのSNSのアカウントには気をつけよう。多くの人がApple Store内の端末でSNSを楽しんだ後、ログアウトせずに帰ったりしているようだ。それで従業員が楽しんでしまっていたりして。。
3. 顧客の嘘は見抜ける
Apple Storeで働いたことのあるスタッフはこう言う。「Apple Storeの中で嘘をつくと、いいことはありませんよ。私たちはお客様がいつ嘘をつこうとしたかがわかるんです。私たちはお客様を精一杯お助けするために店内規則を曲げるようなこともしますが、もし嘘をつかれたら、すみませんが本当に規則を曲げさせていただきます」。どこでディスプレイパネルを交換しようと、またはトイレにiPhoneを落とそうと、それを隠そうとしてもスタッフにはわかってしまうというわけだ。
4. お客様は神様、だが神様だって道理をわきまえなければならない
Redditによると、Apple Storeの店員の行動規範は”謙虚であれ、協調的であれ、権威的になるな”とされているというが、実際のところApple Store店員はあなたの最良の友達にも、あなたの最悪の敵にもなりえる。そう、あなたの態度次第で。
「ある人がお店でクレーマーなど悪意を持った人を演じるのであれば、その人はたくさんの障害物をこえて出て行かなくてはならないでしょうね」とBruceさんは言う。Bruceさんはインディアナ州のApple Storeのスペシャリストだったが、去年退職している。もしあなたが店員に対してご機嫌斜めで接した場合は、待ちぼうけゲームを仕掛けられることになる。「店員は”バックヤードで解決方法について見てきます”と言って引っ込むかもしれないですが、実はただバックヤードで座っているだけで、その人を待たせているんです」。
Apple Store内で大声でクレームつけるおばちゃん。こういう人はさらっと待ちぼうけ攻撃を食らうことになるかもしれない。。(再生すると怒鳴ってるのでボリュームに注意)
もしあなたの態度が友好的であれば、店員は逆にその職権外の労力を使ってでもあなたを助けようとするだろう。インディアナ州のApple Store店員、Bruceさんはこんなエピソードを語ってくれている。「とある女性顧客が、MacBookがどうしても直らず、中には亡くなったばかりのお母様の写真がたくさん入っていて、お葬式の写真までもが入っているのでなんとかしてほしいという相談に来ました。その女性は夜の8時半にご来店されたのですが、店は9時に閉店しなければならなかったのです。しかし私はなんとかその女性顧客のために写真をとりだしてDVDに焼き付けました。そしてその作業は10時半までかかったのです」(これこそ良心的な店員の鑑ではないだろうか)
5. 店員は不満のはけ口ではない。大抵の問題は顧客側に原因がある
多くの場合、デバイスの問題は顧客側に原因があるものだ。大抵は何か間違ったことをしたか、使い方についてよくわかっていないかのどちらかだ。
6. Appleのビンテージデバイスが持ち込まれることもある
顧客が見たいのは何も最新のiPhone6やApple Watchだけではない。多くのAppleの古いデバイスを見に来たりするという。もちろん、修理依頼も。店員のEricさんは、かつてApple IIeを持ち込んだ年配の女性顧客の接客をしたことがあるという。「Apple IIeなんて中学生の時使ったきりですよ」とEricさん。
Appleでは生産停止から5年以上経ったデバイスを”ビンテージデバイス”と呼び、7年以上経過したデバイスは”時代遅れ”なデバイスとされている。これらのデバイスはApple Storeの店員でさえパーツを手配することができないため、修理不能だ。それでも一度ならず何度も持ち込む人さえいるという。「これらのデバイスをまだ使ってくれているということ自体がすごいことですよ」とEricさんは言う。「Appleの製品はやはり素晴らしいということの証拠でしょう。10年とか12年前のデバイスを今だに使っている人がいるんですから」とEricさんは言う。
7. 多くのヌード写真を見たことがある
一般的にいえば、もし他人に見せたくないものがあれば、それは端末内に置いておくべきではない。
「端末から端末にデータを移し替えるとき、それがどうしても画面に出てしまうんです」とApple Store店員のJamesさんは言う。「あなたが想像できるようなものはみんな見たことがありますね」
8. Apple Storeのシャツを着るのは想像以上に大変なこと
Apple Storeの店員になるのは容易なことではない。「スタンフォード大学に入る方が、Appleに雇われるより簡単だ、なんていわれていますよ」と店員のJamesさんはいう。とある普通の職位が100人から1人、または1000人から1人という狭き門をくぐり抜けないとゲットできないという厳しさがあるという。そして多くの厳しい面接を経なければならず、更にスーパーバイザーがいない状態で店に立つには何週間もの研修を受けなければならないという。
そして新人が研修を終え、準備ができたとみなされた場合のみ、ようやくAppleオフィシャルTシャツに袖を通すことができるのだという。「あれは通過儀礼のようなものです」とBenさんはいう。「まるで、”OK、来たね、訓練も終わった、これからは君のフィールドに出て行きなさい”というようにね」。
しかしこのApple公式Tシャツはお店の外で着られることはないという。主にはブランディングがその理由だが、それに加えて、もし店外でこれを着ていたら近くの壊れたiPhoneを持っている人にすぐ話しかけられてしまうからというのも大きな理由らしい。
「ある時、私はApple公式Tシャツの上にジャケットを羽織って出かけていましたが、ジッパーを閉め忘れていたので、ある人にAppleの従業員だということがばれてしまいました」とBruceは漏らす。「そしてその人は私に近寄ってこんなことを言うんです。”へい兄ちゃん、ちょっと俺の携帯に問題があるんだけど、直せる?”私は”この野郎、私はランチにいくところなんだよ!”と思いましたね」
9. 紹介がキーとなる
Apple Storeで仕事をするには、紹介が全てだという。「一番の近道は知り合いになり、そして紹介されることです」とBenさんは暴露する。「Appleはそれを非常に感じています。Apple社は従業員に、紹介ボーナスを出しているほどです。もし紹介した人が雇用されたら、例えば500ドル(約6万円)とか1000ドル(約12万円)のボーナスがもらえるのです。もしこれが(Apple Storeではなく)会社の従業員となったら、恐らく数千ドルになるでしょう。」
Appleは従業員たちが、どんな人がAppleの企業文化に合うかを理解していると信じている。一部の従業員は”特別紹介カード”を持っており、もし町中のレストランで素晴らしいウェイターを見つけたり、またその他の店で素晴らしい営業マンを見つけたりした場合は、その”特別紹介カード”を渡してAppleへの入社について話をするという。
10. ともかくたくさん拍手をする
やる気と熱意こそが、Appleカルチャーの大部分を占めている。Apple Storeの従業員が研修をスタートするときには、”clapped in”という拍手で迎えられる儀式を通過する、とBenさんは言う。「新しい従業員が部屋に入ってくると、みんながとても長い時間、拍手をして出迎えてくれる。長すぎて不愉快になるほどにね」。
これによって、仕事に情熱的に取り組むことへのサポートをする意味があるという。そして従業員が退職するときも、”clapped out”によって、拍手で送られるという。「私のAppleでの最後の勤務の日、全てのAppleの従業員が、何をしていたとしても私に拍手してくれました」とBenは漏らす。「もちろん、お客さんは”何が起こったんだ?”という顔をしてましたけどね」
Apple Store店内の”clapout”の動画。こんなシーンを目撃した方、います?
11. Apple本社は”母艦”と呼ばれている
Apple Storeのシニアスタッフ、例えばジーニアスやクリエイティブと呼ばれる人たちは、米国カリフォルニア州クパチーノでトレーニングを受ける。もちろんその費用は全て会社持ちだ。そしてその本社は従業員の間で”The Mothership(母艦)”と呼ばれている。
12. Apple従業員には永年勤続賞がある
入社5年以上が経った従業員には、ティム・クック(Tim Cook)CEOの直筆署名がある額縁に入った賞状をもらえるという。数年前、スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)の署名がある5年勤続感謝状がネットオークションに出たときに、2,000ドル(約24万6千円)の価値がついたことがある。そして10年勤続の場合は、Appleロゴが入ったガラスのブロックが贈られるという。
13. お客様は神様、だから店員はお客様のミスを指摘しない
iWatchなどというものは存在しない。本当はApple Watchだ。しかしもし優秀なApple Storeの店員であれば、顧客が商品名を間違って伝えてもわざわざそれを指摘することはしない。そうすることで顧客に恥をかかせてしまうからだ。「多くのお客様がiPod TouchのことをiTouchとおっしゃいます。」とEricさんは語る。「でもそれを直そうとするのは骨折り損のくたびれもうけです」
14. 窃盗しようとする人がいたら、それを親切な対応で殺す
Apple Store内のデバイス上には警報タグがついておらず、警備体制が緩いように見える(小龍注:国によると思われる。香港や中国にはついている)。「Apple Storeの防犯システム戦略はフレンドリーで魅力的なお客様との会話にあります」と店員のBenは語る。「私たちは立ち位置さえ訓練されています。そして常に入り口に向かって立つようにしており、全てのお客様に挨拶をするようにしています。」そのことが顧客に自分は常に見られているという意識をさせ、盗難を思いとどまらせる、というわけだ。
15. “Appleの奇跡”の目撃者になることもある
ある男の子がApple Storeに現れ、自分のMacが壊れ、全ての宿題がその中に入っていると相談しに来た。しかし男の子にはもう1台買うお金はない。その時、それを聞いていた近くの人が彼に3,500ドル(約43万円)の新しいMacを買ってあげたという。「男の子は感動して泣いていました」と店員のBruceさん。「純粋にいい人に出会うと、’みんながみんなしょうもない人ばっかりじゃないんだな’と思いますね。その日の仕事の残り時間がちょっぴり楽しくなりました」
画蛇添足 One more thing…
3の顧客の嘘は見抜ける、だが、これはかなりの技術を持ったスタッフでないと難しいと思う。なぜなら嘘をついてiPhoneを新品に交換してもらったという知り合いを何人も知っているからだ。
14の防犯対策について、恐らく国や地域のそれぞれの実情によって変化しているかもしれない。特に中国のApple Storeではこのような対応は徹底されていないように感じる。上海のApple Storeでは対応も結構雑だったし、店員の数が全然足りていない気がした。もちろん挨拶もされない。香港のアップルストアも、香港人は全体的にせっかちなので対応は結構ぞんざいで、もちろん挨拶もほとんどしない。中華圏独特のものかもしれない。また、誰でもそうだと思うが、切羽詰まって犯行に及ぶときには人が見ているかどうかなどは関係ない。そんなわけで中国や香港では防犯タグをつけているのだろう(引き抜くとピーピーと鳴るタイプ)。
その他にも、SwanBridgePartnersの寺村代表より上記15以外にも以下のApple内部情報もいただいているので軽くご紹介。
- 正社員登用されるテンポラリースタッフがいる
- 専用アプリを使用していて、クパチーノまで直接繋がる
- 顧客が数十mまで近づいたらビーコンでキャッチして担当が決まる
- 2週間に一度のPDCAサイクルを高速回転させている
記事は以上。
(記事情報元:mentalfloss)