Apple SIMパートナーとしてAppleと提携しているGigskyが本日公表したデータによると、Apple SIMは現在既に140もの国或いは地域で使用することができるようになっている。
しかしこれだけApple製品が普及している日本でも、またお隣のAppleの世界第2のマーケットになっている中国でも、殆どApple SIMの存在は知られていないか、或いは多くの人々がそのApple SIMそのものを見たことがないというのが現状だろう。
Apple SIMのリリースと、立ちはだかるキャリアの壁
Apple SIMはAppleが自ら発行するSIMで、2014年に4G LTEに対応したiPad Air 2と共にリリースされた。Appleの意図としては、ユーザがどの国にいても複数の携帯電話キャリアの中から好きなものやサービスを選び、しかもSIMを入れ替えずに使うことができるようにし、そうすることでiPadを持ち歩くのがより便利になるというものだ。
しかしApple SIMの登場はキャリア達にとっては望ましくなかったらしく、Apple SIMは登場以来キャリアからありとあらゆる妨害工作を受けてしまった。ユーザにとっては便利になるが、キャリアにとってはユーザの囲い込みができなくなるため、彼らの利益とユーザ数の減少に繋がるからだ。そしてこれまではユーザは特定のキャリアと長期間の契約を結ぶことによって通話料の割引サービスや端末代金の割引を受けられるというのがこれまでの習慣だったのだ。
Apple SIMがリリースされた初期には、とある海外のキャリアでは、ユーザが自社のネットワークに切り替えた途端に他のキャリアに切り替えられないように設定してしまうというような措置をとったところもあった。完全なるApple SIMへの嫌がらせだ。
Apple SIMは2年でようやく普及レベルへ、しかし中国では今でも未対応
しかしそんな2年間に及ぶテスト期間を経て、このApple SIMのサービスにもある程度の改善がみえてきた。冒頭にも書いたとおり、現在は世界中の140の国や地域のキャリアがApple SIMの提携パートナーとなっており、アメリカの代表的なキャリアAT&TやSprint、T-Mobileをはじめ、イギリスのEE、そして日本のau KDDIもApple SIMをサポートしている。
アジアでは、日本が初めてのApple SIMをサポートする国となった。しかしお隣のAppleの世界で2番目の規模の市場を持つ中国では、今のところどのキャリアもApple SIMに加入していない。中国国内ではMNP(モバイルナンバーポータビリティ、携帯電話番号を維持したまま違うキャリアに乗り換えるサービス)さえまだ実現できていないのだ。
中国では独自の方向に発展、いち早く【バーチャルローミングSIM】を実現
しかし中国国内のスマートフォン(スマホ)メーカーは、この上記の状況を鑑みて(利用して)独自の方向に発展している。彼らはいくつかの海外のキャリアと協力し、バーチャルローミングができるというサービスを既に開始している。このサービスを使えば、ほんの少しの費用を支払うだけで、スマホの端末やSIMを切り替えることなく、国外で現地のキャリアのネットワークを使うことができるようになる。ファーウェイ(HUAWEI,華為)をはじめとして、シャオミ(xiaomi,小米)、レノボ(Lenovo,聯想)、金立などのメーカーが次々にこのバーチャルローミングSIMサービスを自社のハイエンドスマホの目玉機能としてリリースしている。
この点においては、Appleは中国国内スマホメーカーに後れをとっているといわざるを得ない。どの国でも、キャリアの特殊な立ち位置と地位によってまだまだキャリアは権勢を誇っている(以前よりはよほど低調にはなってきたものの)。Appleだけではなく、中国国内の上記のスマホメーカーでさえ、バーチャルローミングSIMについては付随サービスの1つとしてリリースされたもので主流にはなりえず、キャリアの存在を脅かしたりキャリアの優勢をひっくり返すにまで至っていない。
その理由も考えてみれば簡単で、Appleもその他のスマホメーカーも回線の敷設や維持に費用を支払っていないからだ。その一番コストがかかるインフラ部分を負担もせずに、キャリアの利益を損ねるようなことは確かにキャリアとしては黙っていられないところもあるだろう。またそれらの回線の敷設や維持は国営のところもあり、そうなるとローミングには国の許可が必要なのはいうまでもない。
Appleは完全にSIMが必要なくなる【e-SIM】を今年3月iPad Pro 9.7インチモデルで実現
Appleの次世代iPhoneはSIMが2枚差しのデュアルSIM同時待受仕様になるという噂を当ブログでもご紹介した。
これまで長い間、「SIM2枚挿し同時待受」はいわゆるコピー携帯(中国語では"山寨")の代名詞でもあったといえる。しかし、もしAppleもその"山寨"陣営に加わったとしたら?昨日、中国版TwitterのWeibo(微博)ユーザ、@有没有搞措が、最近次世代iPhone 7のものとみられるSIMカードスロット部分の写真をリークした。@有没有搞措氏はiPhone 7がSIM2枚挿し仕様になるとしている。まだ他のメディアなどの検証が行われてはいないが、とりあえずこれが実現したら面白いということでご紹介。 部品写真がリーク!iPhone 7ではSIM2枚挿し同時待受が可能に? - 小龍茶館 |
しかしこの動きはAppleのこれまでの動きとは逆行するものだ。
Appleは既にApple SIMを本体に埋め込み、つまりバーチャルローミングSIMのような機能【e-SIM】を、今年3月にリリースされたiPad Pro 9.7インチモデルで既に実現してしまった。別途Apple SIMを買わなくても、本体側にSIMが入っているようなことになっているため、Apple Store版のiPad Pro 9.7インチモデルを買えば、既にApple SIMと提携している各国のキャリアのネットワークを使用することが可能になるのだ。
e-SIMを搭載することによって、Appleはこれまで端末の小型化に大きな障碍となっていたSIMスロットをなくすことができる。正直あのSIMカードスロットの空間はnano SIMであったとしても、既に他の超小型化した部品からすればとてつもなく大きいのだ。
もちろんiPhoneにおけるSIMカードスロットの廃止はすぐには難しいかもしれないが、いずれAppleのiPad Pro 9.7インチや中国国内スマホメーカーのハイエンドスマホが既に実現している【e-SIM】のようなかたちが今後世界の主流になっていくかもしれない。
画蛇添足 One more thing…
ちなみに私も中国のシャオミの【mi note pro】を使っているが、後から更新されたGUIにてバーチャルローミングSIM機能が追加された。日本を含む各国のローミングが可能で、価格も高くないが、4G LTEに対応していないことも多く、スピードが必要な通信には向いていないかもしれない。
Gigskyがおすすめ
また、冒頭で紹介したGigskyは、実はApple SIMがGigskyのテクノロジーや提携先を利用してサービスの拡大を図っているほどのサービスだ。Apple SIMはiPadでしか使えないが、GigskyのSIMはiPhoneでもどんな端末でもSIMフリーであれば使用することができる。料金はアプリからApp Store経由でチャージできるので、便利かもしれない。電話機能が必要ない人は、Gigsky1枚で世界中に行けるかもしれない。ちなみにApple SIMが対応していない中国にも対応している。
Apple SIMを買うくらいなら、このGigskyを買った方がいいだろう。Amazonでも売っている。
電話をすることはできないが、今の世の中、仕事にもよるが携帯電話が必要なシーンって殆どないのではないだろうか。。携帯電話だけはガラケーで済ませて、データ通信はスマホで別SIM、という使い方の方がスマートかもしれない。私もそろそろ本格的に電話はもういらないんじゃないかと思い出してきた。といいつつ先日の帰国でSIMをU-mobileからIIJ mio(BIC SIM)に変えてしまったので、あと1年は手放せなくなってしまった。笑
記事は以上。
(記事情報元:WeiPhone)