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Apple、昨年夏に米国ベストセラー小説”Pachinko”の映像化権利を購入、その目的とは?

Appleは昨年夏に、米国でベストセラーとなった小説”パチンコ(Pachinko)”と同名のシリーズドラマの権利を獲得しており、これからドラマを制作することがわかりました。

小説”Pachinko”のカバー

米国系韓国人作家のイ・ミンジン(Min Jin Lee)によって書かれたこの小説作品は、韓国(朝鮮)に住んでいた貧しい4世代の家族が、日本に移住し、日本で生活を確立するという物語です。日本ではほぼ封殺されていますが、アメリカではベストセラーになりました。Appleはこの作品を2018年8月に、この本を原作としたシリーズもののテレビドラマ化の権利を最初に取得していたのです。

この小説は、1911年、スンジャが誕生したところから始まります。スンジャは結婚相手がヤクザで、その相手の子を妊娠しましたが、生まれ育った小さな村で破滅に直面してしまいます。そこでその村が所属する町の役人がスンジャを娶って日本で新しい生活をすることを提案します。スンジャはその提案の通り日本に行きますが、結局一人になりました。日本語も話せないスンジャは日本でサバイバルのような生活を余儀なくされます。この小説はそれから80年もの時間と4世代にわたって、スンジャの家族について描かれたものです。

戦前の朝鮮併合で多くの朝鮮人が日本人となり、日本に渡りましたが、結局は朝鮮人は下等民族とされたことで朝鮮人全体が差別の対象となってしまいます。戦後多くの人が韓国に帰ろうとしますが、結局光復後の国は貧しかったため国に戻っても仕事がなく、日本に残ることを選択した人達とその子孫が、現在の在日朝鮮人です。戦後さすがにあからさまな差別は減っていきますが、それでも結局在日朝鮮人の人達はもし自分が在日であることが暴露されるとやはり差別をされてしまうため、日本に完全に溶け込むことは難しく、在日朝鮮人達は小説の題名にもなっている”パチンコ”店の経営をすることで日銭を稼ぐようになります。ゲームといえば合法ですが、ギャンブルというと違法となる。。日本政府はそれを”グレー”なものとして黙認する代わりに、経営する人達を軽蔑するようになります。結局、差別は違う形で日本に根強く残っているのです。

このようなことを赤裸々に描いているため、日本の大きなメディアでは恐らく故意に話題にしないようにされていますが、アメリカでは話題沸騰していました。作者のイ・ミンジン氏は比較的成功した、米国に渡った韓国人の子孫です(英語話者で、韓国語はそれほど話せないようです)。アメリカでは、韓国人は真面目でよく働く移民のイメージで、日本の在日のようなイメージはないことから、イ・ミンジン氏は同胞が日本で受けている仕打ちについてショックを受け、小説化を思いついたそうです。

なお、Appleが権利を購入した”Pachinko”のテレビ番組は、プロデューサーのスー・ヒュー(Soo Hugh)によって制作されます。ヒューは以前に “The Terror”、 “The Whispers”、 “Under the Dome”、および “The Killing”といったドラマを制作していて、これまで8つのエピソードが計画されています。この作品、題名にも”パチンコ”とあるくらいで、舞台は日本になるわけですが、日本の俳優なども協力しているのでしょうか?撮影で用いられる言語は日本語なのか、英語なのか、韓国語なのか?この辺りもとても興味深いです。

Appleは12以上ものオリジナルのテレビ番組コンテンツを用意しているといわれていて、3月25日にカリフォルニア州クパチーノにある本社Apple Park内のスティーブ・ジョブズ・シアターにて行われるスペシャルイベントにて恐らく発表すると思われるTVストリーミングサービスを通じてこれらの作品が配信されるのではないかとみられています。

Appleは基本的に経済以外の社会的問題対しては大変リベラルな姿勢を持っていることで有名です。このような内容の作品については、ベストセラーになったという要素を差し引いても、興味を示すのかもしれません。個人的にも、”Pachinko”は見てみたい作品となりました。

記事は以上です。

(記事情報元:MacRumorsCourrier

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