スマートフォンの業界では、どのブランドにも、どんなことをやってもうまくいかない市場があります。例えばサムスンにとっては中国、ファーウェイにとってはアメリカなど。そしてあのAppleがどうしてもうまく行かない市場があります。。それがインドです。昨日のBloombergの記事によると、Appleの市場での販売実績があまりにも酷いため、ここ数週間でインド支社の複数のマーケティング幹部を失っているということです。
Apple、インドでの営業・マーケティングの中心人物3人が相次いで退職
報道によると、Appleのインド支社では3人の幹部が既に退職しています。その3人とは、国内販売及びディストリビューションのトップ、ビジネスチャネルと中堅企業向けビジネスのトップ、そして通信キャリア販売のトップのことです。正に、営業とマーケティングの中心をなすキーマンの3人が退職したということで、異常事態といえるでしょう。名前を明かさないことを条件に語った内部の人物によれば、現在Appleはインド内部で、営業部隊の組み直しを検討し、計画しているということです。
Michel Coulomb氏は2017年12月にAppleのインド業務の責任者となりました(その後退職)。Coulomb氏は通信キャリアチャネルで非常に豊富な経験があったにもかかわらず、今回のインド市場では先に進めない状況に陥ったといいます。「ビジネストレーニングが非常に遅く、営業部隊が全く方向を失っている状態でした」と当時の内部事情を知る人物は明かしています。
インドでは悲しいほど売れていないiPhone
マーケティングリサーチ会社のCounterpoint Researchのデータによると、Appleの2017年のインド市場でのシェアはたったの2%で、320万台しかiPhoneが売れなかったということです。そして更に開いた口が塞がらないのが、2018年はもう既に半分異常すぎているのに、今年はまだインドで100万台しか売れていないというのです!Counterpoint Researchは、「Appleは毎年後半に販売のピークを迎えるのですが、今年前半の業績があまりにも低すぎ、1年の業績は必ず前年比で下がるはず」と予測しています。
インドでiPhoneが売れない理由は高すぎる価格設定
アナリストは、iPhoneはインド市場で売るためには価格設定が高すぎるのが主な売れない原因としています。インドはスマートフォンに高額の輸入関税をかけていて、かなり早期からインドに工場を進出させてきたサムスンや中国のシャオミ(小米、Xiaomi)とは大きな価格差が出てしまっています。これらのメーカーに比べ、Appleはようやく今年インドで製造工場の操業を始めたばかりで、しかも進出したのは組立OEM先でも最も小さい台湾Wistron(緯創資通)で、生産している機種はiPhone 6sのような旧機種のみという状況です。
Appleはインド市場に執着、将来的によくなることを希望
Apple自身はインドに非常にこだわりを持っていて、ティム・クック(Tim Cook)CEOもインドは第2の中国市場となるとみています。今はiPhoneの価格は非常に高くなってしまっていますが、若く野心のあるインド人達が経済レベルを引き上げてくることを信じていて、彼らはますます色々な分野で「アップグレード」を望んでいるとしています。
実際はAppleはインドに本気になっていない、やることはまだまだある状態
ただ、マーケティングリサーチ会社のCounterpointはクックCEOの見方には反対しています。「Appleは重点をインド市場に置いていません。なぜなら今のインド市場は取るに足らないほどの規模でしか売れていないことから、Androidメーカーに虚に乗じて入るチャンスを与えてしまっています。サムスンやシャオミ等のメーカーは既に自社ブランドのユーザ忠誠度を確立していますが、Appleは本当にまだまだやるべきことがたくさんあります」としています。
逆の見方をすれば、やることがまだまだたくさんあるということは、Appleにもまだまだ勝機があるということで、チームを入れ替えて、資本を投下して本気で臨めば、現状を打破できるかもしれません。ただ、恐らく現在のところはインド国内の法規制やその他の条件が整っていないため、全力をかけるべきではないとAppleのマーケティング部門や法律部門が判断しているのかもしれません。
まずは公式のApple Storeを立ち上げることが、Appleにとってのスタートになるのではないかと思われます。また、今後最新機種かそれに近い機種も、インドで製造(組立)することが求められると思われます。
記事は以上です。
(記事情報元:Bloomberg)