AIグラスの世界出荷が、2026年上半期に前年同期比263%増となりました。9月21日公表のCounterpoint Researchの調査によると、全体の96%は画面なしの製品です。目の前に映像を重ねるグラスよりも、カメラや音声でAIを使うメガネが出荷の大半を占めています。そうなっているのは恐らく価格的なものが大きいと思われますが、見てみましょう。
急成長する画面あり型との24倍の規模差
263%増を出荷倍率に直すと、1+263÷100=3.63倍です。前年同期に100本だった規模が、今年は363本になった計算です。
画面ありのAR・AIグラスも前年同期比449%増と急伸しています。それでも、全体の96%が画面なし型なので、画面あり型は残る4%。公表比率で計算した本数比は96÷4=24倍です。画面あり型の伸び率が高くても、現在の出荷規模では画面なし型との差が大きすぎて、市場で存在感が示せていません。
この違いは、買う側の用途にも直結します。音声で回答を聞きたいのか、それとも視界の中に文字や案内を表示したいのか。後者を求める場合、仕様欄ではAI対応という表記に加えて、ディスプレイの搭載と表示できる内容が肝となります。画面なし型では、レンズ越しに翻訳文や地図を表示できず、アウトプットは全てはスマートフォンと連携しないと見られません。でも、それだけで足りる人はそれでよいということになりますし、殆どのAIグラスには特に画面表示が求められていないか、或いは求める層にちょうどいい価格と性能の商品が供給されていない、ということを市場シェアが証明しています。
Metaの画面なし製品だけで全体の約9割
ちなみにメーカー別になると画面なし型の出荷シェアはMetaが94%、そして残り6%のうちXiaomi(シャオミ、小米)とAlibaba(アリババ)がそれぞれ1%です。スマートフォンなどのデバイスと比べると、Metaの圧倒的な独占市場であることがわかります。
そしてMetaの出荷自体も前年同期比260%増でした。AIグラスでサングラスの高級ブランドRay-Banとコラボするなどして先行展開してきたMetaが、市場拡大とともに販売数そのものも伸ばしています。
市場全体に占める画面なし型の96%と、その中でのMetaの94%を掛け合わせると、96%×94%=90.24%。この公表比率による概算では、Metaの画面なし製品だけで、AIグラス全体の約90.2%を占めるということになります。
中国勢が先行する画面あり型
画面あり型の出荷シェアはRokid(ロキッド)社がMetaに先行していて41%、その後がMetaが37%。その差は4ポイントです。また、画面あり型の地域別出荷では中国が45%を占めます。画面なし型では北米50%、西欧28%で、両地域=欧米の合計は78%ということになります。
中国向けが45%という数字の対象は、全体の4%に当たる画面あり型です。両方の比率を掛けると4%×45%=1.8%で、AIグラス全体に対する中国向け画面あり型の比率は概算で1.8%となります。中国市場は画面あり型で大きな存在感を持ちますが、この45%をAIグラス全体での中国のシェアと読んでしまうと、規模を取り違えてしまいます。そもそも画面あり型が4%しかないので、その中の中国シェアが大きいとしても、市場全体で見れば非常にシェアが小さいのです。
小龍的にはこう思った
小龍的には、AppleがAIグラスへの参入を考える際、今回の数字から拾いたいのは「画面がなくても出荷が伸びている」ことと、「その市場の大半をMetaが押さえている」ことです。Appleが2027年に画面なしのスマートグラスを投入するとの観測はありますが、発売時期や仕様は未確認です。ちなみにAppleは10年以上前からスマートグラスを出す、そのための特許を申請したなどの情報が毎年のように伝えられてきていますが、まだ製品化には至っていません。
もし上記の観測どおり2027年に発売されるのであれば、Appleは出荷実績のある製品形態で参入できます。その一方で、同じ画面なしの市場では約9割をMetaが握っているため、Meta製から乗り換えてもらう理由を用意しなければなりません。ここからは推測ですが、差を付ける焦点は音声への応答、カメラで捉えたものの理解、普段使うスマートフォン(iPhone)やAirPods等周辺機器との連携です。
8月に整理したAppleのスマートグラスの参入観測に、今回の上半期の出荷構成を重ねると、後発の課題が具体的になります。Apple製だから待つ、という判断をするにしても、翻訳を耳で聞ければよいのか、翻訳を目で読めることが条件なのかによって待つかどうかが変わってきます。もし後者が必須なら、画面なしという現時点の観測は、購入条件と合っていないため、考慮に入らないといえるでしょう。
もちろんAIグラスといっても、AIは本体に搭載するのではなく、連携しているスマートフォン側に備わっているという形になるでしょう。そうなると、やはりSiri AIの性能次第ということになりそうですね。
ただ個人的には、去年XiaomiのAIグラスを買って使ってみての感想は、画面に表示が出ないとただの隠し撮り用のカメラにちょっと毛が生えた程度かなあというものでした。昨年7月にインドネシアの旅行で使ってみましたが、普段メガネをかけていないので慣れないのもあり、耳などデバイスに触れる部分が疲れてしまうのもありました。普通のメガネに比べてバッテリーの重みが増えるのが負担を大きくさせてしまう感じがします。それでもXiaomiのAIグラスは十分軽く作られている感じはします。
もしメガネのガラス部分をディスプレイとしてフルカラーで相当綺麗に表示されるようになれば、それこそVision Proの小型版ともいえるデバイスになり、しかもしっかり前が見えて、持ち出せるという点ではよいと思います。ただ、バッテリーのためにメガネのフレームを相当分厚くしたり重くしたりしないと実現しないのであれば、私も機能をとるか装着性をとるか悩んでしまいます。
Rokidはガラス上に緑色で各種インジケータや文字を表示するのは有名ですが、あれらがずっと見えていることがストレスになったりしないのか、まだ使っていないので何ともですが気になります。サイバーパンクな感じで、ドラゴンボールのスカウター的に使えたら面白いと思うので、実はRokidのAIグラスにはかなり惹かれてはいるのですが、3000元(約75000円)を超える金額に、そこまで出す必要があるのか悩んで二の足を踏んでいます。しかも、中国版を購入すると恐らく完全に中国仕様になってしまうのもAndroidですとよくある話。日本版もあるようですが、まだそこまでいらないかなあと思っています。
もしApple AIグラスが出るようでしたら、店舗で試すくらいのことはやってみたいですね。
記事は以上です。
(記事情報元:Counterpoint Research、9to5Mac)
