今朝日本国内のテック系ブログ等で、中国のネットニュースサイト「21财经」の記事を転載した海外テック系メディアの報道を紹介する記事として、今年2018年の新型iPhone3機種のうち、2機種が中国向けにデュアルSIMデュアル待受(DSDS、Dual SIM Dual Standby)仕様となるというものがいくつか出ていました。
ただ、原文を読んでいない、或いは全く考察していないと思われる記事が多かったので、当ブログでは原文ではどうだったのか、また実現可能か、そして信憑性について考察したいと思います。
6.1インチLCDモデル1機種ではなく、2機種でDSDS?
まず、原文では「中国向け2機種のみ物理的なデュアルSIMデュアル待受仕様となる」ということが内部事情を知る複数の人物から記者に明かされた、とされていますが、どの2機種であるかどうかについては明記されていません。これまでは6.1インチLCDモデルのみがデュアルSIMデュアルスタンバイになるという情報が世界的に著名なアナリスト、Ming-Chi Kuo氏によって予測されていましたが、2機種という情報はありませんでした。
中国販売モデルだけ、物理的にDSDSが実現?ありえるのか
そして問題は、中国で販売される機種のみ物理的なデュアルSIMデュアル待受になる、とされていることです。そして中国以外の機種では、e-SIMによるバーチャルデュアルSIMを実現すると書いています。しかしもしこの表記が正しければ、中国向けだけハードウェアを変えるということになりそうですが、現実的にはありえない気がします。これまで中国版はiPhone 5sや6は中国国内通信キャリアによって4G(LTE)に繋がらない仕様になっていたりしましたが、これはベースバンド(モデム)チップの仕様の違いや、iOSレベルでのコントロールの違いによって実現していたものです。キャリアや国によるベースバンドチップの違いについては、これまで中国を含む世界各国で行われており、そのためにモデル番号が異なっているのは周知の事実です。
ただ、ベースバンドチップはロジックボード(メイン基板)上の小さいベースバンドチップを切り替えればいいことですが、SIM2枚差しと1枚差しではSIMトレイも異なりますし、内部のスペースが変わるため、設計的に大きな変更が必要となります。
Appleは中国向けの製品のためだけにそんなことをするでしょうか?
元ソースには「中国ではe-SIMが実現できない」という誤った表記も
21财经(ニュースソース)には、「中国ではe-SIMが実現できない」ということが書いてありますが、実際の現在の中国では、Apple Watch Series 3のセルラー版が公式に販売され、中国三大キャリアのうち、中国聯通(China Unicom、チャイナユニコム)は最近からではありますがe-SIMに既に対応しています。ということは、中国版にもe-SIM版によるデュアルSIMデュアル待受が実現してもおかしくないはずなので、事実と異なるといえます。また今後その他のキャリアもiPhoneがデュアルSIMデュアル待受になるとなれば、e-SIMの導入を急ぐはずで、業界にとってもいいことです。
元ソース自体の信憑性があまりないかも
また元ソースの21财经では、原文の投稿者の名前(陈宝亮)と記者の名前(李一戈)が食い違っており、また21财经というサイトについても、サイト全体の名前は「21世纪经济报道」にも関わらず、省略形が「21财经」というのも少しおかしく、サイトそのものの信憑性についてもそれほど信頼できるとはいいがたいと思われます。
小龍のひとりごと
いずれにせよ、全ては噂レベルなので、9月のAppleによる新製品発表イベントでその答えが明らかになりますが、私は2018年の新型iPhoneのうち、中国向け2機種のみがハードウェアで物理的なデュアルSIMデュアル待受が実現するという情報についてはかなり懐疑的にならざるを得ないと思っています。
中国ではいわゆるパクリ携帯の「山寨機」からデュアルSIM・デュアル待受が始まったことから、デュアルSIMデュアルスタンバイの需要は中国にはそれなりにあるとは思いますが。。それがiPhoneが中国でバカ売れするための決定打になるかどうかは未知数だと思います。
記事は以上です。