昨日、日本時間9月12日16時1分から始まった、Appleの新型iPhone【iPhone 6s/iPhone 6s Plus】の予約受付。しかし世界中の多くの人は、そのもっと前の昼頃からAppleのオフィシャルサイトを何度も覗いていたようだ。
そんな中、突然Appleのサーバがダウンする。何回もリロードしても、やはりダウンしたままだ!このニュースは瞬く間にネットを駆け巡った。
ともかくAppleのサイトにアクセスしたい大量の消費者にとって、Appleのオフィシャルサイトはまるで大悪人のようなものだ。しかし事実はそんなに単純なものではなかった。
DDoS攻撃より恐ろしい、Appleファンのアクセス
AppleのiPhoneの新機種がリリースされ、予約受付を開始したときのページアクセス量は、DDoS攻撃よりも恐ろしいといった方がいいかもしれない。しかし今回Appleのサイトがダウンしたのは、どうやらDDoS攻撃のせいではなかったらしい。実は問題はAkamaiにあったという。
問題はAkamai、ではAkamaiとは?
一般ユーザにとっては、Akamaiという名前はあまり聞かない企業名かもしれない。そして企業レベルや個人レベルでWebやワードプレスなどを管理していないと、CDNという言葉もあまりなじみがないかもしれない。
ユーザのアクセスを快適にするために、多くの企業のサイトがCDN(Contents Delivery Network)サービスを使っている(実はこのサイト、小龍茶館も画像に関してはCDNを使っている)。そしてAkamaiは世界最大のCDNサービスを提供している企業で、世界のインターネットアクセスの実に30%はAkamaiサーバを通っているといわれている。その中にAppleのオフィシャルサイト、apple.comも含まれている。つまりあなたがapple.comにアクセスしようとしたときに、バックグラウンドではAppleオフィシャルサイトのコンテンツをAkamaiが自身が配置したサーバの中にバックアップしているため、あなたが見ているコンテンスは実はあなたに最も近いAkamaiサーバ上のものなのだ。
ちなみにApple以外にも、BBC、Sony、ニンテンドーなどもAkamaiの主要顧客だ。
今回世界的にAppleのオフィシャルサイトが開かなくなったのは、AppleのCDNサービス会社Akamaiがあまりに大量のアクセスに耐えきれず、自動プロテクト機能が働き、パーミッションを変更してアクセス制限を行ったことが原因だという。
CDNサービスがアクセス増加に耐えられなくなり、上記のような応急措置が採られた場合、当然ながら緊急メンテナンスが必要となる。実際にAppleもAkamaiもその緊急メンテナンスに追われていた。
Akamaiで2つ目の悲劇が発生
そしてそこに2つ目の悲劇が発生した。Akamaiはその時、問題があることは確認できたが、どんな問題なのかが特定できなかったため、問題を解決できなかったのだ(だいたい昨日の14:30前後だったという。Appleのオフィシャルサイトはその後も暫く表示されなかった)。
また、問題がCDNサービス上で発生したため、Appleは完全にお手上げになってしまい、Akamai側のの修復を待つしかなかったのも解決にかかる時間を長引かせてしまった原因となった。
他の解決方法はなかったのか?
さて、そんな時に対策としてAppleはサーバを緊急で引っ越すことはできなかったのだろうか。その答えは、できる、だ。しかし現実は実に残酷だった。
Appleサーバが止まっていたときのエラーメッセージは403で、その表示されている内容はCDNサービス上のものだ。Appleがサーバを引っ越すためには当然ながら莫大なアクセス量に耐えられる回線とサーバリソースが必要な上に、更にDNS(ドメインネームサービス、例えばapple.comという”ドメイン名”をインターネット上の住所の”IPアドレス”に切り替えるためのインターネット上のサービス)の完全な切り替えには数時間が必要だ。新たなCDNサービスに切り替えることもやろうと思えばできたのだが、時間的に予約開始時間に間に合わなかったというわけだ。
結局104分でAkamaiの修復完了
注意しなければならないのは今回はDDoS攻撃ではなく、純粋にあまりにユーザのアクセス量が多すぎたことだ。DDoS攻撃はいったん相手のサーバがダウンすると目的達成されたと判断されて終了するかもしれないが、昨日Appleの公式サイトを訪れるユーザの目的はあくまで「iPhone 6sの予約」。Appleのサーバがダウンしたからといってアクセスが止まるわけでもない。また、Appleサーバダウンの情報はニュースとして世界中を駆け巡ったため、余計に多くのユーザが再読込をし、余分なアクセスを呼んでしまっていた。
そしてAppleオフィシャルサイトのダウンは104分にわたって続いてしまった。つまりその104分が経過した頃には、Akamai側での修復が終わり、問題が解決されたということだ。
Appleにとっては創業以来最大の危機だった可能性も
Appleにとっては、今回は創業以来初めての危機だった可能性が高い。なんとか16時1分の正式予約開始時間に間に合ったからよかったものの、本当に命綱なしで綱渡りをしているような、冷や汗ものだったに違いない。
Appleの新製品発表スペシャルイベントには新鮮味がなかったためか、直後に株価が下落した。更にサーバダウンで主力製品のiPhoneの予約受付が予定通り開始ができなかったとあっては、Appleの経営に影響するほどの株価の下落は避けられなかっただろう。Apple上層部は躍起になって解決を指示していたに違いない。
AppleとAkamaiのエンジニアにとって、人生で一番長い104分になったかも
iPhone 6sを買いたい消費者がAppleのオフィシャルサイトの真っ白な画面を見て驚いている間に、オフィシャルサイトの裏側ではAppleとAkamaiのエンジニア達が必死になって作業をしていただろう。彼らにとって、もしかしたら人生で一番長い104分になったかもしれない。
しかし幸いなことに、105分後にAppleのオフィシャルサイトは回復し、その後Appleファン達の狂騒曲が無事に始まったのは皆さんご存じの通りだ。
記事は以上。
(記事情報元:iFanr)