私が2014年10月にクラウドファンディングサイト”Kickstarter”で投資していた急速チャージ(iPhone 5への充電分1回分が5分、7回分が1時間、通常のモバイルバッテリーの12倍という売り文句)が可能なモバイルバッテリー【PRONTO】が、投資してから1年3ヶ月経ってようやく手元に届いたのでレビューしてみる。
※ちなみに急速チャージとはバッテリーPRONTO本体への充電のことであって、PRONTOからiPhoneへの充電が早くなるわけではない。
techableに掲載されていた、以下の記事。・【早くも目標資金の4倍突破!】あなたのiPhoneをたった5分… iPhoneをたった5分で超高速チャージ可能!?モバイルバッテリー”PRONTO”に投資 - 小龍茶館 |
クラウドファンディングで資金を集めていた”急速充電可能なモバイルバッテリー【PRONTO】”のおさらい
2年近く前に話題に
さてこの【PRONTO】、話題になっていたのはもう2年も前のお話。まずはKickstarterのPRONTOのページ。コメント欄を見るとさんざんなことになっている。。
【PRONTO 12】の規格・仕様・スペック
- リチウムポリマー電池採用
- バッテリ容量:50Wh
- 入力:壁側電源60W(12V、5A)
- 出力:USBポート、12Wずつ(5V、2.4Ax2)
- 出力:12V、96W(12V、8A)
- 重量:490g
- サイズ:14.3cm x 6.7cm x 4cm
- 材質:アルマイト(陽極酸化)加工アルミ(外側ケース部)
日本で【PRONTO】が紹介された記事
そして以下が2014年に日本のメディアで紹介されていた【PRONTO】に関する記事。今でも”PRONTO 評判”というキーワードでググると4つほど出てくる。
iPhone 5を5分で充電完了するバッテリー「Pronto 12」を紹介している。充電できる最大容量は、「iPhone 5」9台分に当たる。価格は119ドル(約1万3,000円)と、高性能なだけあってやや高めだ iPhone 5一台分を5分で高速充電できるバッテリー「Pronto 12」 - ライブドアニュース - ライブドアニュース |
スマートフォンやタブレットがあれば、誰かと連絡をとるだけでなく、スケジュール管理・タスク管理・道案内・写真撮影・ゲームなど使用用途はさまざま。そんな時に気になるのがデバイスのバッテリー残量ですが、5分間の充電でiPhone 5×1台分、1時間の充電でiPhone 5×9台分の電力を蓄電できる急速充電モバイルバッテリーが「The Pronto」です。 たった5分の充電でiPhone 5×1台分を蓄電できる急速充電バッテリー「The Pronto」 - GIGAZINE |
革命的とも言えるモバイルバッテリー「The Pronto」がクラウドファンディングのKickstarterに登場しました。 このThe Prontoには、容量が4,500mAhの「Pront 5」と、13,500mAhの「Pronto 12」の2つのモデルがあります。 驚くべきはそ わずか5分でiPhone×1台分の充電ができる!魔法のようなモバイルバッテリー「The Pr... - meeti - ミートアイ |
私はこんな記事に騙された。。
しかし私はこの記事に騙されて投資してしまったのだ。。題名にあるように「あなたのiPhoneをたった5分で充電」。。KickstarterのPRONTOのページの説明をよく読んでいなかった私がバカだったわけだ。
モバイルデバイス隆盛の現在、いつも私たちの頭を悩ませるのが充電の問題だろう。しばらく充電しなくても数日は電池がもったフィーチャーフォンと違い、たくさんのアプリを作動させているスマートフォンは、もってせいぜい2日程度。その... 【早くも目標資金の4倍突破!】あなたのiPhoneをたった5分で充電!?超スピードのバ... - Techable(テッカブル) |
さて、私が投資したのはPRONTO 12という大容量の方。EARLY BIRDには間に合わず、結局EARLY ADOPTERというのにせざるを得なかった。119ドル(約14,000円)も払ったのだが、、その価値は全くなかったと断言できる。そしてこのコースは現在でも2000個のうち1603個が売れ残っている。。
【PRONTO】開封の儀
運送費追加の謎
まず、中国でこの品物を受け取ったのだが、送られてきたときにはUPSで送られてきたのだが、問題なのが受け取りの際に136元(約2,440円)とられたことだ。購入したときに、輸送費も余分に35ドル(約4120円)も払っているにも関わらずだ。つまり、全部で20,560円の出費ということになる(しかも円高の現在のレートでだ)。
しかも、領収書をよく見ると、深圳の会社宛にUPSが発行した深圳の増値税発票(付加価値税領収書)だ。これは本来私が払うべきではないと思われる。Kickstarter経由で文句をつけてみたいと思うが、もう払ってしまったので取り返すのは難しいかもしれない(とりあえず受け取り拒否したらネタにならないかなと思ってやらなかった)。
他にもPSDS(Product Safety Data Sheet)やMSDS(Material Safety Data Sheet)もついてきた。これは香港から中国に”バッテリー”を輸出入する際に必要だったのだろう。実際、香港からのバッテリーの輸出は、特別な手続きをしない限りは基本禁止となっているからだ。おかげで製造元もわかってしまったが、だからどうするという感じもする。。
外箱開封
外箱もまあ、ともかくでかい。それだけで結構幻滅だ。。
▲表側。買ったのがPRONTO 12という大容量タイプだが、容量は13,500mAh。今よく使っているCheero Power Plus 3が13,400mAhでほぼ変わらず。
▲オープンというところを開けてみると、色々と説明書きが。5分でこのバッテリーにiPhone1日分の充電。。と。しかしそれはiPhone 5/5sの時代の話。2年前に企画された製品だから仕方ないとはいえ。。うーん。
▲裏側。ちょっと内側から突起のようなものが出て箱が破れているのがわかる。輸送中に相当揺れたかな。中国だから仕方ないか。にしても緩衝材が入っていなかった。アメリカの会社だからか経験が浅いのだろう。Kickstarterはちゃんとしたメーカーは少なく、所詮素人が出品しているとしか。。
▲上側から開けるのだが、そこにぶら下げて展示できるような金属フックが。。全然エコ考えてないでしょ、という感じ。
▲開けるとこんな感じでブリスターパックに入った本体が見えてくる。
外箱開封後
▲取り出してみるとこんな感じで、本体となにやらケーブルが入ったブリスターパックと、充電アダプタが入った箱が1つ入っている。ともかく、重たくてでかい。
▲全てを取り出すとこんな感じ。iPhone 5sは大きさ比較用に。いかに【PRONTO 12】がでかいかがわかるだろう。。
本体レビュー
▲ともかくずっしり重くてでかい。。しかも、最初の募集の時と違って、外側の材料がアルミではあるが黒いアルマイト加工(陽極酸化加工)タイプになっている。最初の募集時と外観が変わるのはちょっと反則じゃないかと。。最初の募集時の方がちなみに下の画像が募集時のもの(もしかしたら私が黒を選んだのかもしれないが、1年以上も前の話なので忘れてしまった)。
▲iPhone 5sとの大きさ比較。あまりに大きくて、分厚い。。そして持つとずっしり重い。はっきりいって持ち歩きたくない。
▲ほぼ同容量のCheero Power Plus 3との大きさ比較(左のPRONTO 12が13,500mAh、右のCheeroが13,400mAh)。断然Cheero Power Plus 3の方が軽く、スマートだ。
▲弾力性のある紐で、蓋が取り付けられている。で、完全にこのように外れてしまう。デザインと言われればそれまでだが、蓋が外れてしまうのは不便この上ない。モバイル使用だと置き場所にも困る。USBケーブルを挿して給電する際にも外していなければならないじゃないか。実際の使用環境を一切考えていないデザインじゃないかと。
▲蓋を外した後はこんな感じ。
- USB出力ポートは2つあり、両方とも12W(5V 2.4V)。つまり2.4Vでの出力が両方とも可能ということで、その点はCheero Power Plus 3より優れている(Cheeroは2つのUSB出力ポートでそれぞれ2.4Vと1Vの出力しかできない)。
- 12Vでの出力も可能なので、コンピュータなどへの給電も可能だ。とはいえ13,500mAhしかないのでそんなには充電できないのだが。。
- 真ん中のPowerボタンが、なぜかシールが貼ってあって、ボタンの位置とずれているのも気になる。
しかし繰り返しになるがやはり持ち歩きたくない。
マニュアル(取説)レビュー
▲マニュアル(取扱説明書、取説)はこんな感じだが、使うことはあまりないかも。一応1年保証が付いている。
急速充電可能な巨大モバイルバッテリー【PRONTO】使用の儀
▲ということで早速使用してみよう。。とUSBライトニングケーブルをつっこんでiPhoneを充電しようとしてみたら充電できない。で、調べてみたら完全にバッテリーが放電しきっている状態だった(恐らく輸出の際にそれが条件になっていたのだろう)。ということで付属のACアダプターを使って充電開始。
▲確かに触れ込み通り、5分で1つのランプがつき、1時間でこのように満充電となった。Kickstarterのコメントでは1時間で充電できないという書き込みもあったが、うちのはできた。
【PRONTO 12】評価・レビューまとめ
一応2万円以上も出して買ってしまったものなので、真面目に評価・レビューすると以下の通り。
【良い点】
- 急速充電が可能なモバイルバッテリーという触れ込みは嘘ではなかった。実際本当に1時間以内で充電可能だ。
- 2つのポートで2.4V出力可能なのは強力。
- 12V出力ができるのは、12インチMacBookの給電などにはいいかもしれない。ちなみに12インチMacBookのバッテリー容量は5,249mAhのため、2回は満充電できることになる。
- ともかく会社や家などにいる時間が少なく、モバイルバッテリーを空港など移動手段の中でも急速充電する必要のある完全ノマド生活の人などには最適かもしれない。
【悪い点】
- 何はともあれともかくずっしり重く、体積が大きいのが難点。
- 重さは490g。ほぼiPhone2つ分だ。またほぼ同容量のCheero Power Plus 3の重さは245gで、ちょうどPRONTO 12の半分だ。Cheero Power Plus 3の方はPRONTO 12の半分の重さで同じ容量、更に体積が小さい。。いくら充電時間が多めにかかっても、どちらを持ち歩くかどうか。
- 容量が13,500mAhというのも重さや容積に比べて非常に少なく感じる。ちなみにAnkerやCheeroなどのバッテリーで20,100mAhのモデルがほぼ同じ重さの約500g弱で存在する。
- 価格がべらぼうに高い。PRONTO 12は輸送費も入れたら総額2万円超え。同容量で半分の重さで体積も小さいCheero Power Plus 3は約3,500円。どちらを買うかは。。
- 12V出力ができるのはいいが、12インチMacBookの半分の重さのバッテリーを持ち歩くかどうかは評価が分かれるところだろう。また12V出力には、シガーソケットタイプの出力方法しかない。受け側にシガー用の購入が必要だ(他にも方法はあるのだろうがまだ調べていない)。
- 電力残量表示のLEDがPOWERボタンを押しても消えない。ずっと点灯したまま。。これはそれなりに電力を浪費するのでは。
- Powerボタンがシールの位置とずれていて、しかも凹んでいるため使いにくい上、使い道がよくわからない。
【未検証ポイント】
- 表示容量は13,500mAhだが、実際のところの容量がどれほどなのかはまだ測定できていない。
- 12V出力はまだ試せていない。
- USB2ポート+12V出力の3つの同時出力が可能かどうかは試せていない。
【総評】
- モバイルバッテリー本体への急速充電可能、12V出力可能という2点の特徴を除いて、後はでかい・重すぎ・その割には容量少ないというモバイルバッテリーにあるまじき欠点だらけ。コスパを考えれば非常に悪いと言わざるを得ない。2万円というお金を払ってでも急速充電と12V出力が必要な人は購入してもいいと思うが、個人的にはオススメできない。自分は特に急速充電の需要がないため、このバッテリーを持ち歩きたいとは思わない。
画蛇添足 One more thing…
RAMBO!
最後に。。あの”RAMBO ランボー”のお話!?
▲箱を開けると実はこんなカードが入っていた。THANK YOU FOR…の2番目にご注目。「NOT GOING RAMBO ON US FOR OUR LATE DELIVERY」って、そりゃ、ランボーにもなりたくなりますよ。ここまで書かれているということは、このPRONTOのおかげで世の中に沢山ランボーが出現したものと思われる。私は大人だから、やらなかっただけ。。3番目がボールド体になっているけど。。どこがAWESOMEなんだか。。
急速チャージを除けば、もっとコスパが高いモバイルバッテリーがあるよ。。
個人的には、よっぽど重いものを持ち歩いても平気!速攻で充電できるバッテリーが欲しい!という重度なモバイラーでもない限り、同じ容量のモバイルバッテリーを買うのであれば下のリンクにある私も使っているCheero Power Plus 3を断然オススメしたい。
また、MacBookへの充電ということであれば、20,100mAhのAnkerのバッテリーが対応していて、重量も481gと若干このPRONTO 12より軽いのでそちらをオススメしたい(但し大きさはAnkerの方が大きい)。USBポートでデュアル2.4V(合計4.8V)出力も可能だ。価格も3,800円と断然PRONTO 12より安い。Amazonで買うことができる。
個人的には、もうこの失敗に懲りて、クラウドファンディングには手を出さないようにしようと思う。。これまでRing、PRONTOと連続で失敗、また他にも面白いと思って投資した他のものは、資金調達に成功しても製造までに至らなかったからだ。そう、1つもだ。。やはり電子・電気系のガジェットは、ちゃんとした実績のあるメーカーのものを買った方がいいと思われる。
記事は以上。