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用意周到!Appleは”APFS”の導入を密かにiOS 10.3より前から準備していた

Appleは今年の初めにリリースしたiOS 10.3アップデートで、正式にAppleオリジナルのファイルシステム、”APFS(Apple File System)”を導入しました。

APFSは、従来のHFS+に代わって20年ぶりにAppleが導入した全く新しいファイルシステムです。従来のHFS+は1998年に導入されたファイルシステムですが、HFS+は1985年のHFSの改良版のようなものなので、実際は30年以上前のとても古い技術ということになります。当時はフロッピーディスクやハードディスク、しかも今考えると絶望的なほど容量が少ない記憶媒体を使っていて(98年はハードディスク1GBとかが普通でした)、HFS+はそれに合ったものだったのですが、現在は速度が圧倒的に速いSSDが主流で、しかも大容量化しています。

APFSは正にSSDに最適化されたファイルシステムなのです。そしてアクセス速度からスナップショット機能、暗号化によるセキュリティまで、何もかもが従来のHFS+よりも格段に優れています。実際、iOS 10.3を導入して体感速度が向上したという感想があちこちで聞こえていますし、私自身も速度が上昇したことを体感しています。

しかし、システム全体のファイルシステムを置き換えるというのは並大抵のことではありません。そんな大胆な変更を行えば、不具合が発生してもおかしくありません。それにも関わらず、iOS 10.3でのAPFSの導入と移行は非常にスムーズに行われました。一体Appleはどうやってそれを成し遂げたのでしょうか?

先月頭に開催されたWWDC17(世界開発者会議 2017)の基調講演が終わった後、Appleのソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長、クレイグ・フェデリギ(Craig Federighi)SVPが、著名なブログ”Darling Fireball“の著者でジャーナリストのジョン・グルーバー(John Gruber)のポッドキャスト番組”The Talk Show”で、この新しいファイルシステムの導入のために行ったあらゆる準備について語っています。

フェデリギSVPは、実はiOS 10.1とiOS 10.2で、Appleは誰にも察せられることなく、iOSのファイルについて過渡期のテストを行い、準備をしていたことを明かしました。そしてこのことが、iOS 10.3正式版でいきなりAPFSを導入しても移行にトラブルなく問題がなかった、という結果をもたらしたのです。

ではAppleはその「準備」を具体的にどのように行ったのでしょうか?その裏には大変細かい技術的な仕掛けがありました。iOS 10.1とiOS 10.2の中で、AppleはAPFSの元データをテストで書き出す動きをし、実際には書き出しませんでした。ファイルデータは完全に保存され、使用していたのは以前のHFS+ファイルシステムです。これが転換の準備でした。そしてiOS 10.3ではそのテストが本番となり、HFS+のデータはAPFSのデータに完全に置き換わります。

iOS 10.3では全ての新しいAPFSファイルシステムへの移行が、シームレスに完了したのです。

なお、そのテスト結果は、iPhoneやiPadを復元したりアップデートをしたときのアクティベーションの際にオンにすることを薦められる、診断データをAppleにフィードバックするという機能で、ユーザがオンにしていればAppleに報告されていた、というわけです。設定>プライバシー>解析で、iPhoneとWatch解析を共有をオンにすれば、報告することができます。私自身はオフにしていますが、オンにするとデベロッパに報告する、などのオプションも表示されるようになります。

しかしこのAPFSは本当に素晴らしいテクノロジーだといえるでしょう。Appleが億以上いるといわれているiOSユーザに、シームレスにファイルシステムを移行させ、それによるユーザデータの紛失等の問題が発生しなかったのは奇跡といえるでしょう。

クレイグ・フェデリギSVPは、上記の”The Talk Show”の中で、「私たちのファイルシステム・ファイルチームは非常に素晴らしいです。彼らは1〜2年のスピードでこのレベルまで持ってきました。私は、、もし以前だったら、10年以上時間をかけないとできなかったことだと思います」と語っています(とはいえ、HFS+から今回のAPFS導入までに20年かかっているのはどうなんだとちょっとツッコみたくなるのは私だけでしょうか。。笑)。

iOSユーザのAPFSへの移行が完了した後、Appleは今年秋にリリースされるmacOS High Sierraで、MacユーザのファイルシステムのAPFSへの移行を行います。恐らくiOSの時と同様、Appleは用意周到に準備していたはずですので、問題なく移行が完了するでしょう。

WWDC17の基調講演で、クレイグ・フェデリギSVPがデモを行ったmacOS High SierraのAPFSを使ったファイルのコピーのデモは圧巻でした。従来のHFS+では長くかかっていたものが、APFSでは一瞬で終わってしまったからです。同じマシンでOSをアップデートするだけでとんでもなくパフォーマンスがアップし、更に無料でアップデートが提供されるという。。確かに外観のイノベーションなども大事ですが、AppleのOSのアップデート、特に今回のAPFSの導入は実はとんでもないイノベーションといえるのではないでしょうか?

最後に、クレイグ・フェデリギSVPが出演した”The Talk Show”はYoutubeで見ることができます。そしてもう一人の名物SVP、フィル・シラー(Phil Schiller)氏も一緒に出演しています。ご興味のある方、英語のわかる方は是非どうぞ。

記事は以上です。

(記事情報元:The Mac Observer

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