Appleの折りたたみ式iPhone【iPhone Duo】の内側ディスプレイがヒンジに沿って割れる問題について、中国の経済メディア界面新聞が10月26日19時13分(中国時間)に、Foxconn(鴻海)の関係者の話として新しい事実を2つ伝えました。1つは、生産能力が逼迫していた時期に、Appleが供給を確保するために歩留まりの検査基準を一部緩めていたという証言です。もう1つは、iPhone Duoの生産ラインが部材を一式、緊急に交換済みで、実際の生産と備蓄の方針は維持しているという話です。あわせて流通筋の話として、今年のiPhone Duoの備蓄は750万台規模だと伝えています。英語圏ではGSMArenaが10月29日に報道し、Appleが「少数」と認めた声明と結び付けて紹介しています。いずれも匿名の証言で、Appleは検査基準についても台数についても何も認めていません。
証言の3点:iFixitの分析とほぼ同じ原因、「緩めていた」検査基準、交換済みの部材
界面新聞の記事はまず、発売初週に広まった亀裂の事例として、上海・陸家嘴の国金中心(IFC)にあるApple Storeの1台と、オーストラリアの利用者がRedditに投稿した1台を挙げています。症状は共通していて、数回から数十回ほど開閉したところで折り目の付近から音がして、3〜5センチの割れが入るというものです。当ブログでお伝えしてきた各国の報告と同じ出方ですね。
原因について界面新聞は、閉じるときに中央の支持棒が十分に退かず画面を押してしまうことと、円弧状のガイドレールが想定どおりに動かず画面と干渉することを挙げ、Foxconnの従業員がこの分析にほぼ沿った原因だと述べたと書いています。これは当ブログでもお伝えしたiFixitの分解の仮説と同じで、工場側の人間が外部の分解結果を否定しなかったことになります。
新しいのはここからです。同じFoxconnの従業員は、生産能力が逼迫していた時期にAppleが供給確保のために歩留まりの検査基準を一定程度下げていたことがあり、それが画面に問題のある製品が市場へ流れる確率を必ず高める、と述べています。さらにiPhone Duoの生産ラインは部材を一式、緊急に交換済みで、今の実生産には影響がなく、備蓄の方針もまだ変えていないということです。一方で販売店側の話として、手元で問題機が出る頻度は高くなく、アフターサービスの問題もまだ起きていないとも伝えています。
なお、GSMArenaの見出しは「AppleがiPhone Duoの検査基準を下げた」ですが、本文には「品質管理の基準は変えられていない」とも読める一文があり、見出しと食い違っています。界面新聞の原文を読むと、従業員の証言は「以前に緩めたことがある」という過去の話で、記事の結びは「Appleはその後も基準を引き締めていない」という指摘です。つまりGSMArenaの「変えていない」は「緩めたあとも引き締めていない」の意味で、見出しの「下げた」と筋は通っています。
| Appleの折りたたみ式iPhone【iPhone Duo】の内側ディスプレイがヒンジに沿って割れる問題について、Appleが日本時間10月27日未明、公式に回答しました。MacRumors、9to5Mac、Engadgetの3媒体に同じ文面の声明が出ており、要旨は「少数のiPhone Duoで内側ディスプレイに影響する問題を認識している。ディスプレイに問題が出た利用者は、交換のためにAppleCareに連絡してほしい」というものです。声明が触れているのは問題の認識と交換の連絡先の2点だけで、原因や台数、対象の範囲、設計や生産の変更は、この声明の範囲外です。同じ10月... 【Appleが初めて回答】iPhone Duo内側画面の亀裂は「少数」、AppleCareで交換。ヒンジ部品会社株は15.7%安 - 小龍茶館 |
「検査を緩めた」と「一部の個体だけ割れる」はぴったり噛み合う
当ブログでは、YouTuberのCuriousHagi氏の分解をもとに、割れる場所は設計で決まっていて、割れるかどうかは個体ごとの組み付けのずれで決まるという見立てをお伝えしました。組み付けが少しずれた個体だけヒンジが支持板に引っ掛かり、その固さを押し切った瞬間に中央の細いリンクが折れる、という流れです。今回の証言は、この見立ての空いていた部分を埋めています。
歩留まりの検査基準を緩めるということは、本来なら弾かれていたはずの「少しずれた個体」が合格して出荷されることを意味しています。全台で起きる設計不良なら検査基準をいくら緩めても割合は同じなので、「検査を緩めたから不良が市場へ流れた」という証言そのものが、問題が一部の個体に限られることを前提にした話です。Appleの「少数」、販売店の「頻度は高くない」、そしてFoxconnの「検査を緩めていた」は、別々の立場から同じ形の問題を見ている、ということですね。
そして「部材を一式、緊急交換した」という話は、原因が特定の部材のロットにあったことを意味しています。当ブログでお伝えした通り、ヒンジ部品を供給する韓国のFine M-Tecは「当社部品に欠陥はない」と声明を出し、法的措置まで示唆していますので、交換されたのがヒンジの金属部品なのか、支持板なのか、画面側の層なのかで、責任の所在は大きく変わります。Fine M-Tecが本当に無関係なら、交換された部材は別の会社のものだったことになります。ただし、どの部材かまでは界面新聞も書いておらず、ここが一番知りたいところです。
更に気になるのは不具合が出る可能性がある個体が出てくる順番です。証言どおりなら、問題の部材と緩い検査基準で作られた本体は、部材交換の前に既に出荷され、または備蓄に積まれていることになります。Appleが緩めた基準を維持しているのであれば、交換後の部材で作られた本体が、交換前の本体と同じ検査を通って出てくる形です。部材が直ればずれの発生そのものが減るので結果は良くなるはずですが、それを確かめる数字はAppleからも工場からも出ていません。
| Appleの折りたたみ式iPhone【iPhone Duo】で、発売直後から内側ディスプレイの亀裂の報告が続いています。The Vergeは日本時間10月26日早朝に、YouTuberのCuriousHagi氏が分解で原因箇所を突き止めたと伝えました。CuriousHagi氏は耐久テストの最中に亀裂を自分で再現したうえで本体を分解し、ヒンジ機構のうち本体中央にある連結リンク1本が、上下のリンクより薄く作られていて、小さな切り欠きの位置で折れていたことを確認しました。当ブログで一昨日お伝えした亀裂の報告の続報で、「なぜ全員が同じ場所で割れるのか」に部品のレベ... 【ヒンジ中央の細いリンクが折れていた】iPhone Duo内側画面の亀裂、YouTuberの分解で原因箇所を特定 - 小龍茶館 |
750万台の備蓄は多いのか
流通筋の「今年の備蓄は750万台規模」という数字は、Appleが発売前から供給を絞らざるを得なかった背景を示しています。当ブログでも何度もお伝えしてきたように、iPhone Duoは日本では予約開始直後から納期が年明けまで延び、日本の価格はApple公式で36万4,800円(税込)からという超高額機です。それでも足りないという状況で、工場に「検査を緩めてでも台数を出せ」という圧力がかかったという証言は、辻褄が合っています。
ただし750万台は備蓄、つまり年内に用意する台数です。売れた台数とも、不良率を出すときの分母とも別の数字です。Appleは「少数」としか言っておらず、何台のうち何台なのかは、今ある材料では誰にも計算できない数字です。流通筋の数字と工場の証言と販売店の体感を1本の記事に並べたのが界面新聞の報道で、Appleが公式に出した数字はその中に1つも入っていない、という前提で読むべき記事です。
日本の読者が今できること
日本で既に受け取った人も、これから届く人も、自分の本体が部材交換の前に作られたものか後のものかを見分ける方法はありません。できることは当ブログでお伝えしたとおりで、最初の数十回の開閉で明らかに固いと感じたら、力で押し切らずにそこで止めてAppleに相談することです。報告されている亀裂はほぼ全て「固い抵抗を押し切った瞬間」に起きていて、無理に開かなければ中央のリンクに力が集中する場面を避けられます。割れてしまった場合は、Appleの声明どおりAppleCareに連絡すれば交換の対象で、9to5Macの報道ではAppleCare+への加入は不要とされています。
ただし、1TBや2TBはそもそも需要が多くないことを見込んで品薄だったり、Apple Storeではなくキャリアで購入した場合なども交換用の在庫がなかったりして、待つしかないという状況だったりするようです。
購入をこれから考えている人は、年内の備蓄750万台のうち、どこから先が部材交換後の本体なのかが外からは分からない以上、日本では暫く様子を見た方がよさそうです。どのみち日本の納期は年明けにかかっていますので、急いで予約を入れる理由も今のところありません。
小龍的にはこう思った
界面新聞は、Appleが今も検査基準を引き締めていない本当の理由を、折りたたみ市場の好機を逃したくないからだと見ています。個人的にも層だったんだろうなと思います。Samsungが何年もかけて育てた折りたたみ市場に、Appleは36万円超の値段で参入し、それでも予約が殺到しました。この勢いのあるうちに1台でも多く出すことを、歩留まりより優先したとしても自然です。
とはいえ、匿名の工場関係者の証言ひとつで「Appleが検査を緩めた」と断定するのは早計です。Foxconnの現場の人間が社内の検査基準の変更をどこまで正確に知り得るか、また供給を確保したい流通筋にとって都合のよい話になっていないかは、割り引いて読む必要があります。今はっきり言えるのは、Appleが「少数」と認め、工場が「部材を交換した」と言い、ヒンジ部品会社が「うちではない」と言っている、この3つが同時に成り立つ状態だということです。誰の部材がどう変わったのかをAppleが説明するまで、この話は終わらないと考えた方がよいでしょう。といってもAppleがちゃんと説明するかはわかりませんが。
いずれにしても、最低でも40万円近いお金を払って壮大なババ抜きに参加するほどバカバカしいこともないと思われます。根本的な対策がとられた個体が用意されることが確定するまで、購入は待った方がよいのではないかと思われます。私自身も香港法人で予約を入れていた分をキャンセルして、遅ればせながらOppo Find N6を買いました。6代目ですし、安心ですから。。折り目もほぼありません。正直、折りたたみスマートフォンはSamsungか中国メーカーの方が一歩先どころか6歩も8歩も先を行っていることになります。Appleはこれからそういうところと勝負していくことになります。iPhone Duoが初代だけで終わらないことを祈ります。
| Appleの折りたたみ式iPhone【iPhone Duo】の内側ディスプレイがヒンジに沿って割れる問題で、部品の供給元として名前が挙がっている韓国のFine M-Tec(KOSDAQ上場、証券コード441270)が10月26日に自社サイトで声明を出しました。内容は、品質問題の原因を自社の部品の欠陥に結び付ける見方への反論です。イーデイリーが10月27日に声明の内容を伝え、ソウル経済によると同社の株価は10月26日に15.70%下げたあと、27日には5.32%反発しています。当ブログで一昨日お伝えしたAppleの声明と株価下落の続報です。画像:iFixit(iPhone Duoの... 【「当社部品に欠陥なし」】iPhone Duo亀裂で韓国Fine M-Tecが法的措置も示唆、株価は5.3%反発 - 小龍茶館 |
記事は以上です。
(記事情報元:界面新聞、GSMArena、Apple(iPhone Duo製品ページ))
