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Apple、iPad Pro 2018が曲がる問題でサポートページを公開。原因は製造工程上の問題?

先月(昨年12月)辺りから、一部のユーザがSNSなどで、2018年モデルのiPad Proが曲がっている現象があることを報告しています。そしてAppleはこのiPad Pro 2018モデルの筐体問題についてサポートページを公開し、問題があればサポートに連絡するように促しています(ただし記事更新現在は英語版しかありません)。

製造工程上の問題であること、そして検査基準も公開

Appleはサポート文書の中で、iPad Proの筐体が曲がる問題の原因について、筐体の製造工程まで深く入り込んで調査をしたことと、その結果製造工程上の金属と樹脂(プラスチック)部品の冷却工程に起因するものであることをつきとめたことを記しています。と同時に、iPad Pro 2018モデルはまず非常に薄く作られていること、そしてベゼルが直角になっていて確かに曲がっているのが肉眼でも顕著に見えやすいという特徴があることも書かれています。そしてiPad Pro 2018モデルの製造工程上の平面度公差基準は400μm(0.4mm、最大で4枚の紙の厚さ)までと設定されていることも明らかにされています。

iPad Pro 2018 セルラー版特有の製造工程において、Appleは筐体(シャーシ)を金属(アルミ合金)と樹脂(プラスチック)を一体成形で製造していて、特にセルラー版iPad Proには、端末裏側の上下にプラスチックのアンテナ線が入っていて、シャーシの溝の部分に溶けたプラスチックを注入し固めるという非常に高温な処理をする結果、アルミ合金の表面の微小な穴に樹脂が入り込むことで、シームレスに結合することになります。そして樹脂を冷やして固めた後にCNC(マシニングセンタ)で加工に入ります。そうすることによって、強靱な強度を保つことができるとAppleは強調しています。

実はこれらの内容は先月既にユーザへの返信メールで通達されていた

ちなみにこの製造方法や400μmの基準については、先月12月にAppleのSVP(上級副社長)でハードウェアエンジニアリング担当のダン・リッキオ(Dan Riccio)氏が、iPad Proが曲がっているというメールをAppleに送った人に対する返信や、9to5Mac、MacRumors、The Vergeなどのメディアの質問に対して返信した内容に既に記されていたことでした。つまりAppleはそれを単に公開の場に晒したまでということになります。

14日の無償交換と1年の保証範囲内、ただし1年保証では有償修理になる?

Appleは、iPad Proの新しいデザインとアンテナデザインによって、軽い湾曲は発生し、そして角度によっては簡単に目視できてしまうというような書き方になっていますが、通常の使用状況では400μmの平面度の変化はわからないということです。そしてAppleは最後に、iPad Proの平面度基準の400μmに適合しないと思われる場合は、サポートに連絡してほしいとしています。その保証として、まずは14日の無条件返品ポリシーがあること(通常は7日のところ14日になっていることに注目です。ただし、Appleから直接購入したものに限ります)、そして1年の保証期間の中で、AppleがiPadシリーズの保証に関するサポート文書で規定している通常使用状況下で発生する「材料と製造工程での欠陥による破損」という保証適用範囲であれば保証を適用することを書いています。しかし、以下のTwitterによるとどうやらその保証も無料ではないようで、$650米ドル、つまり7万円近くとられるということです。

Appleはこの問題をさっさと終わらせたいようだがそうは問屋が卸さない、かも?

Appleがこのサポート文書によってiPad Pro 2018の曲がりの問題(いわゆる”ベンドゲート=bendgate”)を早々に終わらせたいという気持ちが滲み出ていますが、しかし本当に400μmという基準が妥当なのかどうか、例えば400μm曲がった時の肉眼で見られる図示のようなものがないと、一般ユーザは判断できません。紙4枚分といわれてもなかなかわからないものです。紙だって番手によって色々厚さも違いますしね。。恐らく工場の検査工程内でも、検査治具がないとわからないレベルかと思われます。

これまでMacRumorsのフォーラムやその他のSNSで公開されたiPad Pro 2018が曲がっている写真は、どう見ても400μm(紙4枚分)を超えているように見えます。

MacRumorsのフォーラムに投稿された写真。確かに、セルラー版のアンテナ部分から曲がっているように見えます。曲がりの角度も結構ある気がします。

The Vergeによる写真。

▼Twitterで公開された例。かなり極端に曲がっていますね。通常使用範囲内でこんなになるとは考えにくいですが。。

▼他にもこんな写真がいくつかSNS上にあがって話題になっています。

工場出荷時或いは運搬・保管の段階で曲がりが発生か?またWi-Fi版でも発生

また、通常の使用状況内で発生するとAppleは書いていますが、ユーザによってはiPad Pro 2018を新規購入し、受け取った時点で既に曲がっていたことを指摘している人もいます。つまり、製造工程内・工場出荷時・運搬時・店舗や倉庫での保管時に曲がりが発生した可能性も捨てきれないということになります。更に、Appleはこの問題がセルラーモデル特有のものとしていますが、Wi-Fi版でも曲がりが発生しているという報告もいくつかSNSで上がっていますので、そうなるとAppleの製造技術や製造工程内で発生するのはやむを得ないという説明そのものが矛盾していることになってしまいます。

▼ちなみにこれがiPad Pro 2018 Wi-Fi版。アンテナ線の樹脂が縁の部分までには届いていません。私自身がApple Iconsiam(タイ一号店・バンコク)で見たもので、これは曲がっていませんでした。

まとめ

Appleはこの問題に対して、iPad Pro 2018は薄いこととデザイン上曲がりが目視できてしまうほど目立つことを挙げた上で、製造工程の関係で少し曲がるかもしれないが基準は設けていて、もしそれを超えると信じるのであれば連絡してください、というような態度であり、その検査方法については明らかではないため、ユーザは判断しにくくなっています。もちろん、上記のいくつかの写真のような状況では間違いなく基準を超えていると思われますが。そして耐曲げ性試験などの信頼性試験の結果などは公開していないのも問題です。Appleは14日の交換期限を設けていて、また1年の保証範囲について強調していますが、それでもApple自身の製造上の問題なのに有償修理サービスになるというのはちょっと解せません。

このような報道ばかり見ていると、Appleはこの問題に真摯に向き合っていないような印象を受けてしまいます。しかしAppleがここまで強硬な態度で強調しているのは、何か理由があるような気もします。例えば、SNSにアップした人達が非常識な(特に韓国や中国あたりの)ライバルメーカーの差し金でやっていたとしたら。。?というようなことも考えられなくはありません。ただでさえAppleは売上げが下がって株価も下落しているところなのに、この事件が大きく騒がれるようになるとますますAppleへのダメージが広がるのは明らかだからです。

いずれにせよ、Appleはユーザの信頼を取り戻すためには、更なる分析結果を公開すべきではないかと思います。例えば、上記でも指摘したように耐曲げ性試験などの信頼性試験を行っていることと、その基準が明らかになれば、上記の曲がっているiPad Proの写真は、明らかにAppleの想定以上の力が加わっていることの証明になります。それらの信頼性試験を行っていなかったとしたら大きな問題ですが、さすがにここまで大きいメーカーでそれをやっていないことの方がおかしい気がします。過去のiPadや大型化したiPhone(iPhone 6 Plus)の時代から、曲がりについては指摘されていたことですから、尚更です。

もちろん、これは元とあるメーカー(日本企業)で中国上海工場長をやりつつ、調達・生産管理・品質管理をやっていた自分としての個人的な見解です。

記事は以上です。

(記事情報元:The Verge

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