Appleの折りたたみ式iPhone【iPhone Duo】の内側ディスプレイがヒンジに沿って割れる問題で、部品の供給元として名前が挙がっている韓国のFine M-Tec(KOSDAQ上場、証券コード441270)が10月26日に自社サイトで声明を出しました。内容は、品質問題の原因を自社の部品の欠陥に結び付ける見方への反論です。イーデイリーが10月27日に声明の内容を伝え、ソウル経済によると同社の株価は10月26日に15.70%下げたあと、27日には5.32%反発しています。当ブログで一昨日お伝えしたAppleの声明と株価下落の続報です。
声明の中身:「客観的で技術的な検証が先」、虚偽情報には民事・刑事も
イーデイリーによると、Fine M-Tecの声明は「最近指摘されている品質問題は、当社が供給する部品の欠陥によって生じたものではない」「これらの問題を当社の供給部品に結び付けたり、品質問題と解釈したりすることは事実と異なる」というものです。同社は、開発段階から量産まで顧客の求める技術仕様と品質基準に沿った検証手順を踏んでいると説明しています。折りたたみスマートフォンは複数の中核部品と精密な機械設計の組み合わせだから、完成品で起きた現象を特定の部品の欠陥に結び付ける前に、客観的で技術的な検証が先に行われるべきだ、という主張です。そのうえで、ネット掲示板やSNSで虚偽の情報が広まって企業イメージや株主の利益が損なわれた場合は、民事・刑事の法的措置を含めて対応を検討するとし、報道機関と市場関係者には未検証の推測的な情報の引用と拡散を控えてほしいと求めています。
声明の文面はAppleやiPhone Duoを名指しせず、「顧客」と書くだけです。Fine M-TecがiPhone Duoに部品を納めていることは、AppleもFine M-Tecも公式には認めておらず、ソウル経済もイーデイリーも業界関係者の話として伝えています。つまり「iPhone Duoの部品を納めている」ことも「その部品に原因はない」ことも、現時点ではどちらも業界関係者の話と当事者の主張の段階にとどまっています。
Fine M-Tecが作るのはバックプレート、折れていたのはヒンジのリンク
ここが今回いちばん見ておきたいところです。ソウル経済によると、Fine M-Tecが供給しているとされる部品はバックプレートで、折りたたみディスプレイを裏側から支える金属の板です。韓国では内部ヒンジとも呼ばれ、画面を開閉したときの力を分散して、パネルの構造的な安定性を高める役割を持っています。一方で、開閉の軸になる外側の機械式ヒンジは台湾のShin Zu Shingが主供給元とされています。「ヒンジ部品会社」とひとくくりにされていますが、ヒンジの可動部とパネルを支える板は、作っている会社が違うということです。
では、割れた本体で実際に壊れていたのはどこだったでしょうか。当ブログでお伝えしたCuriousHagi氏の分解では、ヒンジ機構の中央にある連結リンク1本が、上下のリンクより薄く、切り欠きの位置で折れていました。これは歯車状の中央ヒンジとリンクで組み立てられた可動部の部品で、パネルの裏の金属板とは別物です。ソウル経済も、iFixitが損傷の集中する場所として挙げたヒンジ機構と、Fine M-Tecのバックプレートを同一視するのは難しい、と書いています。折れていたと確認された唯一の部品が可動部のリンクである以上、Fine M-Tecの「自社部品の欠陥が原因だという見方は事実と異なる」という主張は、今出ている分解結果と整合します。
ただし、同社を完全に切り離すのも早計です。CuriousHagi氏の分解では、ヒンジが支持板に当たった痕も見つかっています。この支持板がFine M-Tecのバックプレートと同じ部品なのか、ヒンジ側の別の板なのかは、The Vergeの記事もソウル経済の記事も触れていないところです。リンクが折れるきっかけになった引っ掛かりが、リンクの寸法によるものか、相手側の板の位置によるものかは、分解1台では決め手に欠けます。言えるのは、折れた部品は可動部のリンクであり、Fine M-Tecが疑われる余地があるとすれば「折れた部品」ではなく「当たった相手」の側だ、というところまでです。
株価は15.7%安の翌日に5.3%反発、戻したのは下落分の3割弱
ソウル経済によると、Fine M-Tecの株価は韓国取引所で10月26日に前日比1,750ウォン安の9,400ウォンで引け、27日は500ウォン高の9,900ウォンに戻しました。逆算すると下げる前の終値は11,150ウォンで、27日の時点でもまだ1,250ウォン、約11%低い水準です。戻した500ウォンは下落分1,750ウォンの約29%で、反発したといっても回復したのは3割弱にとどまります。声明を出した日に15.7%下げ、翌日に5.3%戻したという順番からは、市場は声明そのものより、翌日に出たAppleの「少数の本体で問題を認識、AppleCareで交換」という回答で少し落ち着いた、と読めます。Appleが原因を公表するまでは、投資家が下落分を全部埋める材料は出てこないでしょう。
外側ヒンジもバックプレートも、発売前に供給元が入れ替わっていた
ソウル経済が伝える業界関係者の話には、もう一つ気になる点があります。外側の機械式ヒンジは当初、米国企業が主供給元でしたが、歩留まりが期待に届かず、二次供給元だったShin Zu Shingが主供給元に繰り上がったということです。バックプレートの方は、中国の競合が歩留まりで躓いたことでFine M-Tecが初期発注の大半を獲得し、供給を始めたのは2026年第3四半期の後半、つまり9月ごろだとされています。発売は10月23日ですから、パネルを支える板の供給元が固まったのは発売の1〜2か月前ということになります。イーデイリーも、開発過程でヒンジ供給元の変更と歩留まりの問題があったと業界関係者が指摘している、と伝えています。
どちらも報道ベースの話で、Appleは供給元について何も語っていない段階です。それでも、可動部とパネル支持部の両方で供給元が発売直前に入れ替わっていたとすれば、設計どおりの部品が量産でそろっていたかどうかを疑う材料にはなります。中国の折りたたみスマートフォンではヒンジもバックプレートも中国の部品メーカーが何世代も作ってきました。Appleの初号機では、外側ヒンジは米国企業から台湾のShin Zu Shingへ、バックプレートは中国の競合から韓国のFine M-Tecへと、歩留まりを理由にどちらも主供給元が替わった、という構図です。
小龍的にはこう思った
当ブログでは一昨日「ヒンジ部品会社株は15.7%安」と書きましたが、今回ソウル経済の説明で分かったのは、Fine M-Tecが作っているのはヒンジの可動部ではなく、パネルの裏の金属板だということです。分解で折れていたと確認されているのは可動部のリンク1本で、そちらの主供給元は台湾のShin Zu Shingとされています。売られたのは折れた部品を作っていない方の会社の株だった、つまり誤爆だった可能性が高いといえそうです。Fine M-Tecが「客観的で技術的な検証が先だ」と言うのは、理屈としてはそのとおりです。とんでもない大迷惑ですからね。
一方で、法的措置をちらつかせた声明を出した翌日に、Appleが「少数の本体で問題を認識している」と認めました。問題が起きていること自体はもう確定しているので、残る問いは「どの部品が、誰の責任で」という一点です。折れたリンクの寸法が図面どおりだったのか、当たった相手の板の位置がずれていたのか、答えを出せる実測はこれからです。Appleが原因を公表するまで、部品メーカーの株価はSNSの写真1枚で動く状態が続くでしょうし、Fine M-Tecが声明で虚偽情報に法的措置と書いたのは、まさにその状態を止めたかったからだと思われます。
読者の皆さんがやることは一昨日の記事のままです。ヒンジが固いと感じたら押し切らず、割れたらAppleCareに相談する、この2点です。部品の責任の所在が決まっても、交換機に入っているリンクの作りが変わるかどうかは、また別の話ですから。
私は長らく中国の製造業で調達を担当して、自身では経験していませんが私の前の調達担当が原因で日本で全国的なクレームを経験したこともあります。そんな私からの個人的な視点では、Appleの設計や調達、そして製造に関わったメーカーや組立メーカーの責任者や担当者は今頃相当肝を冷やしていると思います。もちろんAppleは責任を部品メーカーや組立を担当するフォックスコンに押し付けようとするでしょうけども、さすがにそれらのメーカーも黙っていないでしょうね。どこが責任をとる形になるのか、今後の動きに注目したいと思います。
就任したばかりのAppleジョン・ターナスCEOの一発目の大仕事で彼の顔に泥を塗るような形になってしまったといえそうですが、開発はクックの時代からですよね。。まあともかく物語の続きを見ていきましょう。
| Appleの折りたたみ式iPhone【iPhone Duo】の内側ディスプレイがヒンジに沿って割れる問題について、Appleが日本時間10月27日未明、公式に回答しました。MacRumors、9to5Mac、Engadgetの3媒体に同じ文面の声明が出ており、要旨は「少数のiPhone Duoで内側ディスプレイに影響する問題を認識している。ディスプレイに問題が出た利用者は、交換のためにAppleCareに連絡してほしい」というものです。声明が触れているのは問題の認識と交換の連絡先の2点だけで、原因や台数、対象の範囲、設計や生産の変更は、この声明の範囲外です。同じ10月... 【Appleが初めて回答】iPhone Duo内側画面の亀裂は「少数」、AppleCareで交換。ヒンジ部品会社株は15.7%安 - 小龍茶館 |
| Appleの折りたたみ式iPhone【iPhone Duo】で、発売直後から内側ディスプレイの亀裂の報告が続いています。The Vergeは日本時間10月26日早朝に、YouTuberのCuriousHagi氏が分解で原因箇所を突き止めたと伝えました。CuriousHagi氏は耐久テストの最中に亀裂を自分で再現したうえで本体を分解し、ヒンジ機構のうち本体中央にある連結リンク1本が、上下のリンクより薄く作られていて、小さな切り欠きの位置で折れていたことを確認しました。当ブログで一昨日お伝えした亀裂の報告の続報で、「なぜ全員が同じ場所で割れるのか」に部品のレベ... 【ヒンジ中央の細いリンクが折れていた】iPhone Duo内側画面の亀裂、YouTuberの分解で原因箇所を特定 - 小龍茶館 |
記事は以上です。
(記事情報元:イーデイリー(英語版)、ソウル経済(英語版)、Fine M-Tec、Apple(日本)iPhone Duo製品ページ)
