Android OSとChrome OSが統合するという噂は2010年に既にあったが、今回のニュースでは具体的な時期が示されたのが特徴だった。
ウォールストリート・ジャーナルから流れたChrome OSとAndroid OS統合の噂
ウォールストリート・ジャーナル(以下WSJ)が内部情報に詳しい人物から得た情報として、Googleのエンジニアはここ2年ほど、Chrome OSとAndroid OSの2つのシステムを統一するために動いているというニュースを流し、日本のテック界にもこの情報が駆け巡った。ただ、Chrome OSとAndroid OSはどちらもLinuxのオープンコードで書かれていることは共通しているが、やはりこの大きな違いがあり、統一するのは簡単なことではないという。
上記のWSJの報道によれば、Googleは2017年に正式にこの2つのOSを統一した新しいOSをリリースするとされ、合併後のOSはデスクトップデバイスもモバイルデバイスもサポートするとのことで、アプリストアもGoogle Playに統一されるという。Googleは来年にも外部に向けて統一OSのプレビュー版を公開予定ともされている。
またOSが合併された後、Chromebookは名称変更されるというが、まだ名称は確定していないという。ただブラウザのChromeの名称は残されるようだ。
AndroidがChrome OSを飲み込む?
WSJの報道を見る限り、この2つのシステムの融合・統合は、実際はAndroidがChrome OSを飲み込むように見える。WSJの報道の原題の《Alphabet’s Google to Fold Chrome Operating System Into Android》からもその意図が感じられるだろう。確かにAndroidは利用者が10億人を超えるモバイルOSで、Chrome OSはシェア率がたったの3%にも満たないデスクトップOSだからそれも当然かもしれない。
またGoogleのサンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)CEOは先週財務レポートの電話会議の中でアナリストに「コンピューティングの方式としては、モバイルコンピューティングは最終的にはデスクトップコンピューティングと融合して1つになるだろう」と語ったという。
Googleは公式に統合の噂を否定
しかし、The VergeがこのことについてGoogleにコメントを求めたところ、Googleのスポークスマンはこのように答えた。
“Chrome OSとAndroid OSは同時に存在し、Chrome OSがなくなるということはありません。”
Chrome OSは現Google CEOのサンダー・ピチャイの肝煎りプロジェクト
Chrome OSはサンダー・ピチャイCEOの肝煎りで促成されたプロジェクトだ。ピチャイがCEOになる前に率いていたチームが、2008年と2010年に正式にChromeブラウザと、ChromeブラウザのクラウドOSであるChrome OSを相次いでリリースした。Chrome OSが誕生したその日から、実は外界ではChrome OSとAndroidは将来的に融合するという噂は流れていた。
Google Chromeブラウザの市場シェアは2011年にFirefoxを抜き、2012年に近づくにつれブラウザ界の最大の巨頭、IE(Internet Explorer)をも追い抜いた。ただ、Chrome OSの発展はChromeブラウザのように思い通りにはいかず、クラウドOSの理念は消費者にとってはあまりに先進的すぎたためか、現在でも大衆市場においては受け入れられているとは言いがたい。
Chrome OSのアプリのオフライン機能とグラフィックコンピューティング機能がますます強化されているとはいえ、Chrome OSを搭載したChromebookはやはり教育やエンタープライズ市場のみで少々受け入れられているといった現状がある。
GoogleがChrome OSとAndroid OSを統合させるための動きはこれまでもあった
2013年3月、アンディ・ロビンがAndroidチームを離れてロボットプロジェクトの責任者となり、その時にChromeとアプリ部門の副総裁だったピチャイがAndroidの新しい責任者となった。これはつまりGoogleがChrome OSとAndroid OSを融合させるための準備だったのかもしれない。
面白いのは、2013年時点でGoogleのCEOだったエリック・エマーソン・シュミット(Eric Emerson Schmidt)とサンダー・ピチャイがかつてAndroidとChrome OSの統一の噂を否定していることだ。
2014年、Chrome OS上でAndoidアプリが動かせるように
そして2014年6月が重要な節目となった。Chrome OSで正式にAndroid用のアプリが動かせるようになったのだ。6月に開催されたGoogle I/Oで、サンダー・ピチャイは、AndroidのアプリがChromeで動かせるようになったことを正式に発表、そしてAndroid版のEvernoteとVineをChromebookで動作させるデモンストレーションを行ったのだ。
Android OSもデスクトップ領域に進出
Chrome OSがAndroidアプリの互換性を強めていくと同時に、AndroidもChrome OSの縄張りだったデスクトップ領域に進出している。
Chromebook PixelはChrome OSのフラッグシップともいえるChromebook(ノートパソコン)だが、Googleの幹部はこの製品について「開発プラットフォーム用で、未来のコンセプト的な製品でもある。これを購買した人の85%はデベロッパかGoogle社員だ」と明かす。
そして今年9月の”Nexus発表イベント”では、GoogleはAndroid Mを搭載したPCとタブレットデバイスの間のようなデバイス、”Pixel”を発表した。このデバイスの名前は当然Chromebook Pixelではなく、Pixel Cだった。
これはデベロッパに向けて、モバイル用のOSだったAndroidがデスクトップ端末でも使えることを示したシグナルだったことは疑いようがない事実だ。
WSJの報道ではソースが明らかになっていないが、内容は十中八九間違いないかも
さて冒頭で触れたウォールストリート・ジャーナルの報道に戻ってみよう。報道においてニュースソースはAndroidやChrome OSの統合に詳しいという関係者だとのことだが、そこには明確な人名が提示されているわけではない。しかし上に挙げたGoogleの挙動を見ていれば、十中八九その内容には間違いがないといえるだろう。唯一疑いが残る点としては、Googleのスポークスマンが言うとおりに「Chrome OSが全くなくなることがないか」ということだけだ。
画蛇添足 One more thing…
ウォールストリート・ジャーナルが上記のような報道をしたことでなぜか日本のテック系メディアやブログが大騒ぎをしていた感じがするが、正直ずっとGoogleの動きを追っている者にとっては「何を今更?」というようなニュースであったことは間違いない。
それよりもThe VergeのようにちゃんとGoogleに取材し確認をとっているメディアの方がちゃんとしていると思われるが。
そういえば我らがAppleはいつMac OSとiOSを統合するのだろう。AppleもGoogleと同様、MacよりもモバイルデバイスのiPhoneが売れており、OS XよりもiOSの方が断然出荷台数が多い状態だ。ContinuityなどでOS XがiOSに歩み寄っている感が強いが、iOSはマウスポインタがなかったりマルチタスクに難があるなど、デスクトップOSに近づくにはまだ色々と無理がある。当然、ハードウェア性能の制限も受ける。やはりOS XとiOSは緩やかに統合されていくのだろうか。
記事は以上。
(記事情報元:iFanr)