世界中の人がiPhoneはAppleの製品だということを知っているが、そのことが”iPhone”という商標が世界的に全てAppleに属するということを意味するものではない。
Appleは以前、ブラジルでiPhoneの命名権を申請したときに、現地の監督官庁に拒否されてしまったことがある。その原因は、ある別の会社がとっくにブラジルで”iPhone”の商標を取得していたからだ。そして同様なことが中国でも発生してしまった。それが今回の記事の内容だ。
北京市の高等人民裁判所は先日、二審の終審(中国は二審制)で、Appleが”iPhone”の商標を独占しようとした試み(商標登録に関する異議)を退け、北京の企業「新通天地科技有限公司」が”iPhone”の商標権を持つとした。ただ、今回発生した商標争奪戦はブラジルの案件とは違っている。というのもこの「新通天地科技有限公司」が取得していた”iPhone”の商標の使用範囲が限定されており、スマートフォンの”iPhone”とはかけ離れた分野ばかりだからだ。
Appleは実は初代iPhoneが発売される5年前、2002年10月18日に中国で”iPhone”の商標登録を出願しており、出願番号は3339849で、商標使用範囲は国際分類9「コンピュータのソフトウェア(完成品)及びコンピュータのハードウェア」となっている。Appleは中国では2009年10月にiPhone 3Gから正式にiPhoneを販売しており、現在のiPhone 6s/6s PlusやiPhone SEまで、中国でも高い知名度を誇っている。
一方、北京の新通天地有限公司の”iPhone”商標の申請はちょうどアメリカで初代iPhoneが発売された2007年6月29日のちょうど3ヶ月後の2007年9月29日で、出願番号は6304198、使用範囲の国際分類は18だった。ちなみに国際分類18は「フェイクレザー、牛革、家具用革装飾、パスポートケース(皮革製品)、キーケース(革製品)、革製品のベルト、財布」等の商品となっており、基本的に革製品のみの申請となっている。
つまり、Appleは現在でも中国で”iPhone”という名前、或いはiPhoneの名前を含んだコンピュータソフトやハードを販売することが可能だ(例えば、Find my iPhone、iPhone 7など)。ただ、中国では全ての使用範囲において”iPhone”の名前を使うことができるいわゆる”独占命名権”を失ったに過ぎないということだ。
裁判所の判断としては、確かにAppleのiPhoneは既に中国国内でも「著名な商標」の地位を確立していることを認めてはいるものの、新通天地有限公司は商標登録後からiPhoneの商標権を使用しているため商標法に違反していないとし、また商標登録以前にAppleに損害は与えることなく、また商標取得後の影響も非常に小さいことから、Appleの異議を退けたということのようだ。
画蛇添足 One more thing…
革製品といえば、同社のiPhoneアクセサリ類、例えばケースに革製品が使われることもあるが、それは独立した単体の革製品ではなく、電子製品のためのオプション製品と判断されると思われるので、それらの販売にも影響はなさそうだ。
中国では基本、商標は”早い者勝ち”。もし中国で何かオリジナルなものを販売しようとする場合は商標登録範囲を含め早めに戦略的に動いた方がいいだろう。もし日本の会社で中国で商標を取得したり調査したりする場合は当ブログにご相談を。友人に最強なのがいます。
記事は以上。