長年中国は世界でも最も重要なスマートフォン市場の1つといわれており、その成長速度は驚くべきものがある。事実、2011年には米国を抜いて、文字通り世界最大のスマートフォン市場となった。しかし、これまですさまじいスピードで前進してきたその足取りもとうとう緩んできており、爆発的な成長のチャンスは二度と来ないかもしれない。マーケティングリサーチ機構のIDCによる最新のデータレポートによると、中国のスマートフォンの出荷台数は2016年に初めて減少となると見られている。現実に、前四半期(1月〜3月まで)では前年同四半期に比べて既に4.3%減少している。
中国のスマートフォン市場は既に飽和状態
多くの専門家が中国のスマートフォン市場がなぜ飽和状態になったのかということについての研究を始めているが、既にこのレポートのデータがそのことをはっきりと説明している。現在中国の携帯電話普及率は90%にも達し、これはつまり中国国民がほぼ一人一台携帯電話を持っていることになる。しかもそのうちの殆どがスマートフォンだ。つまりこれは、スマートフォンを新たに買おうという潜在需要がますます少なくなってきていることを示しているのだ。
中国ではAppleが販売台数のトップ
中国では、かつて最も売れたスマートフォンメーカーは韓国のSAMSUNG(サムスン)だった。しかしSAMSUNGは既に中国市場では失速しており、販売台数では中国では4位に落ちてしまっている。それに対してApple(アップル)は中国国内では非常にうまくいっており、現在iPhoneの中国国内でのシェアは26%にも達している。更に重要なのは、Appleは、自社のiPhoneの中国での販売台数が既にお膝元の米国のそれを超えたとしていることだ(非正規輸入品=密輸品、水貨は入っていないと思うが、もしそれが入ったらもっとシェアは高くなるだろう)。
出荷台数は増えても、販売チャネル上で在庫が大量に発生する可能性
中国国内のスマートフォン市場の成長が鈍化することで、中国国産メーカーにとってその状況を突破するのは一筋縄ではいかなくなっている。例えば中国4大スマートフォンメーカーといわれているファーウェイ(Huawei・華為)、ZTE(中興)、シャオミ(xiaomi・小米)、Lenovo(聯想)は、今年こそは出荷台数は増加するとみられているが、今年出荷した製品は販売チャネル上で大多数が余るともいわれている。これらの中で最も人気があるシャオミでさえ、国内市場競争では困難な闘いを強いられるだろう。
旧態依然とした戦略では生き残れない
面白いのは、大多数の中国国内スマホメーカーが、いまだに広告の重点をいかにユーザがスマートフォンを”アップデート”するように説得するか、ということに置いていることで、それによって新型機が出荷台数を刺激するような作戦を採っていることだ。しかし大多数のユーザにとってみれば、自分にとってのスマートフォンの交換周期が、デバイスメーカー達の製品リリース周期よりも圧倒的に長いというのが現状だ。簡単に言えば、ユーザは自分が持っているデバイスがあまりに時代遅れに見えたり、壊れて使えなくなったり、またはあまりに速度が遅くなりすぎて使い物にならないと感じないと、新機種に乗り換えるという決定を下しにくいのだ。
中国ではキャリアの販売チャネルが圧倒的に強いのも問題点
また、基本的にローエンドなスマートフォン販売に頼っている中国国内メーカーにとって、国内市場は非常に厳しい市場だ。というのも、スマートフォンは中国国内では殆ど中国国内の三大キャリア(中国移動 China Mobile、中国聯通 China Unicom、中国電信 China Telecom)によって販売されているという実情があるからだ。例えば現在中国国内出荷台数No.5のCoolPadも、去年の莫大な出荷台数のうち殆どがローエンドデバイスで、しかも三大キャリアの2年縛り契約によって販売されたものだったという。
しかし今でも多くの中国国内スマートフォンメーカーは今でも今年の出荷台数は昨年の2倍にする、などと威勢のいいことを口にしている。上記のような中国国内市場の飽和とボトルネックに対して、一体どのメーカーがどのような突破口を見つけるだろうか?
画蛇添足 one more thing
私個人としては、中国国内のスマートフォンメーカーが生き残るには3つ方法があると思う。もちろん、その3つとも、シャオミ(小米)は既に実行していることなのだが。。
1つ目は、従来のローエンド機で勝負せず、ミドルまたはハイエンド機で勝負するということ。ローエンド機では満足できなくなり、購買力がついてきた都市や地方の中流階級や若者層を取り込むことができる。シャオミはこれまで紅米シリーズなど安価なスマートフォンもリリースしていたが、先日リリースした小米Noteハイスペック版などは文字通りAndroidデバイスの中ではほぼトップの性能を持ちながら、AppleやSAMSUNGほど高くない値段でリリースすることに成功した。爆発的な人気で1秒で売り切れてしまったほどだ。
2つ目は、市場を熾烈すぎる中国市場ではなく、海外に求めることだ。シャオミの場合は市場をBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)に絞っていて、そのうち特にインドには既にかなり投資をして販売を始めている(CEOの雷軍による下手くそでマズい英語の挨拶という失態はあったにせよ)。
3つ目は、スマートフォンから脱して新しいジャンルの製品に活路を求めることだ。シャオミは既にスマートホームやIoT製品への進出を開始しており、安価でありながら信頼性が高く、そして自社のスマートフォンと親和性の高い製品をリリースし始めている。
いずれにせよどんな業界でも世界の強豪がひしめき、熾烈な戦いが繰り広げられる中国国内市場。スマートフォン市場は既に飽和し、限られたパイの奪い合いということになるだろう。不毛な値下げ合戦ではなく、安定した品質での競争になることを望む。
もちろん日本のメーカーなどはそこに入り込む余地はこれっぽっちもなさそうだ。そんなわけで日本のメーカーは完成品よりも部品で入り込むしかないだろう(それも中長期的に見れば現地調達に取って代わられてしまう可能性があるが)。
記事は以上。
(記事情報元:WeiPhone)