中国のネットワーク通信技術において4G(正確にはLTE)が正式に導入されてから1年半、3Gが淘汰され、2G(GSM/GPRS/EDGE)と3Gがまとめて4Gに移行するという傾向となっている。最近、中国最大にして世界最大の携帯キャリア、中国移動(チャイナモバイル、China Mobile)がこれまで独自仕様を貫いてきた3G仕様【TD-SCDMA】の基地を段階的に、しかし閉鎖していくことを決めたという。
段階的なTD-SCDMA基地の撤退、具体的な方法とは
つまりこれは、TD-SCDMAが歴史の舞台から去って行くことを意味し、最終的には2G(GSM)よりも早く退場となってしまう可能性もあるということだ。
上図の中国移動によるTS-SCDMA基地廃止計画をみると、計画は三段階にわかれている。まずは第一弾として一日のネットワークパケット流量が100MB以下という非常に少ない基地を廃止するようだ。中国大陸全土に2233個あり、これは4月30日までに廃止する。
そして第二弾として一日のネットワークパケット流量が300MB以下の基地で、これは4月末までに統計を取り、300MB以下とわかった基地は5月31日までに廃止するという。
その後は第二弾と同様、毎月統計を取ってネットワークパケット流量が300MB以下のところは翌月末までに廃止する、という現実に沿った形での廃止となるもようだ。
中国独自仕様の3G、TD-SCDMAを巡るデータ
それではなぜ中国移動が独自仕様の3G【TD-SCDMA】の切り捨てを決断したのだろうか?ここでその根拠となるであろう2組のデータをみてみよう。
ユーザ数のデータ
2015年末、中国大陸全土の携帯電話加入者数純増は1964万5千人で、全加入者数は13億600万人となった。その中で2G携帯電話加入者ユーザ数は1.83億人減少し、昨年の減少率から1.5倍と減少速度が加速し、全国モバイルユーザ数の54.7%から39.9%に下降した。
4Gユーザは逆に約2億8894万人増え、全体で約3億8622万人となり、全国モバイルユーザ数の29.6%に浸透していることがわかっている。そして3Gユーザ数は8615万4千人減少し、4億人以下となっている。
携帯電話端末出荷数量データ
2016年2月の中国国内でのスマートフォンの出荷台数をみてみよう。上図は2015年2月からの1年間の推移を表しているが、3Gの携帯電話(4G非対応、3G/2Gのみ)の出荷台数シェア(赤線)は2G専用端末(緑線)よりも下落が激しいことがわかる。
それに比べ4G(LTE)対応の端末シェア(紫線)は82%から92%と、もともと高かったシェアが更に増加していることがわかる。
2つのデータから、3Gのみのユーザは減少傾向、4Gへの移行が進んでいることが鮮明に
上記の2つのユーザ数とスマートフォン出荷台数からみても、中国の3G市場は既に4G市場に取って代わられていることがわかる。昨年の後半になって、中国三大携帯キャリアのうち、過去3Gに最も力を入れていた中国聯通(チャイナユニコム、China Unicom)も積極的に4Gや4G+への移行路線を打ち出し、これによって三大キャリア全ての足並みが揃ったことになった。
つまり、中国三大キャリアはそのリソースをますます3Gから4Gに移行していくということになり、中国全体がそのようになるということで共通認識が持たれたことになる。
4Gへの移行と共に、3Gで使用していた価格帯の再利用も
中国移動が大規模にTD-SCDMA基地を廃止する原因は、ここ2年ほどの4Gネットワークの発展によるものも大きい。4Gネットワークはもともと中国移動が殆ど本腰を入れず弱かった3Gのネットワーク基地局をカバーしており、ユーザのパケット通信料も大量に4Gネットワークに移行しているからだ。2G/3Gのみ対応のデバイスもますます減っており、無償でのSIMカード交換やパケット通信料優待などで4Gへの切り替えをキャリアが主導的に図ったことから、4Gへの移行は急速に進んでいるといえる。
そして3Gの減少で空いた部分の周波数帯でまた新しい戦場を仕掛けるということも考えられているようで、国家広電局がいち早く始めている700MHzサービスも同様の方法がとられているといっていいだろう。
移行による3Gの遺棄には課題も
ただ、問題は現在まだ20%いる3Gユーザをどうするか、ということだ。中国移動の撤退方式は合理的で、データ通信量の少ない基地局から廃止というやり方は理にかなっているが、しかし3Gユーザはゼロではない。いきなり3Gがなくなると、ユーザは2G(GPRS/EDGE)のみの通信となってしまい非常に不便を強いられるだろう(それがまた4Gへの移行を促すのかもしれないが)。
中国移動は前述の通り、TD-SCDMAを立ち上げながらその導入には非常に消極的で、対応基地局が少ない上に繋がっても速度が全く出ず、惨憺たる結果となっていた。これは来る4G(TD-LTE)標準化を見越してのことだったと思われるが、3Gを強力に推し進めていた中国聯通と中国電信は煽りを食って3Gに相当投資してしまった。この3G基地局の採算をどうやって取っていくのか、4G或いはこの先の5Gネットワークによる収益でその分の穴埋めができるのか。。それも実は中国通信業者の全体の課題であったりする。
記事は以上。
(記事情報元:cnBeta)