WWDC 2015:Googleをますます除外し続けるApple

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先週、AppleはWWDC(世界開発者会議)を開催し、iOS、OS X、WatchOSのそれぞれのメジャーバージョンアップについて発表した。多くの人がiOS9のiPadのマルチタスク機能OS X El Capitanから搭載されるMetal Mac版のAPI、そしてWatchOS2.0のアプリのネイティブ化時計盤面のカスタマイズが更に豊富になるなどの表面的な変化に印象を持ったに違いない。

iOSユーザのサーチ行動でGoogleをできるだけ回避

iOS9_Search

しかし上記の表面的なアップデート以外にも、よく観察してみると、Appleは今回のWWDCで発表したアップデートで、GoogleのサービスをAppleのエコシステムから”駆逐”しようとしていることがわかる。Googleはあくまでもネット上のサービスを主に提供する企業のため、GoogleにとってはiOSユーザも重要な顧客グループの1つだ。しかしAppleはどうやらGoogleに自らの顧客であるiOSユーザに接触してほしくないようだ。もっとストレートにいえば、GoogleにはiOSユーザからお金を儲けてほしくないということだ。そんなわけで今回のWWDCでAppleは様々なアップデートで何とかiOSユーザの視界からGoogleを消し去ろうとしたようだ。

Googleの業務範囲は非常に多岐にわたる。その中でもサーチ(サーチエンジン)は彼らの主な収入の一つだ。Androidプラットフォームが無償で存在し続けられるのは、Googleがこのモバイルデバイス時代に、ユーザがずっとネット上で検索する習慣を持ち続けることを期待してのことであり、GoogleがこれまでiOSのサポートを外してこなかったのは、iOSユーザの数が多く潜在的市場価値が非常に高いからで、GoogleがリソースをかけてiOSをサポートするに値するととらえているからだ。そしてGoogleに広告を出している広告主もAppleユーザを必要としている。そんなわけでGoogleはAppleユーザに対してGoogleサービスを提供し続けているというわけだ。

しかしAppleはそれをよしとしていないようで、これまでSiriの検索エンジンをBingに変更したり、SafariにSpotlightを埋め込んだりしてきた。今年のAppleは更に進んで、もっと強烈な方法を打ち出した。

AppleはiOSに新しいサーチAPIを埋め込んだのだ。iOS9で、Spotlightではデバイス上にインストールされているアプリの中までディープにサーチすることができるようになり、より正確な検索結果を表示できるようになった。例えばiMDBアプリから映画の情報や、AmazonまたはeBay、楽天などの買い物アプリから検索したい商品、そしてYummlyやEpicurious、日本では食べログなどからあなたが食べたいメニューを探すこともできるようになる。

ユーザーからすれば、このようなユーザ体験(UX)は非常にいいものだ。これは正にユーザが求めていた機能ではないか?しかしAppleとGoogleからすればこれにはもっと深い意味がある。ユーザがSafariのアドレスバーで検索を行うと、AppleのシステムはGoogle検索を回避することができるのだ。

Appleがこのように”Googleブロック”をすることで、Googleは更に新しく便利なChromeブラウザや検索アプリをiOS上に出してくる可能性もある。

広告外しでGoogle Adsenseもブロック

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iOS9から、Mobile Safariでは「広告ブロック機能」が追加され、ウェブサイト上の広告を表示しないようになるという。

そうなると当然痛手を負うのはGoogleを含む広告プラットフォームと、広告主だ。そして私のようなウェブメディアを運営していて、広告を置くことである程度収益を得ているメディアクリエイターも当然痛手を負うことになる。

しかしApple自身の広告、例えばApp Store上、アプリ上の広告、iOS9で追加されるニュースアプリ上での広告は当然外されることはない。今後Appleは広告も自社のものしか認めない、という方針になっている可能性がある。

SiriとGoogle Now

ios9-iphone-search-news

Googleと競争する、ということはAppleがGoogleを学ばない、ということではない。検索機能を強化することにおいて、Siriは多くのリソースと情報を利用することができて更にスマートで知的に進化する。そう、Google Nowよりもっと。これはつまりAppleの製品がもっとスマートで知的な反応をするということになり、プライバシーを保護しつつ、ユーザが欲しがっている情報を提供することができるということだ。WWDC 2015の基調講演で壇上でAppleのクレイグ・フェデリギ上級副社長が「これはあなたのデバイスの中だけで行われるもので、完全にあなたのコントロール下におかれます」と語ったように、このSiriの検索機能はメールの内容まで検索するようなことはない

Appleがプライバシーへの配慮が非常に慎重なことから、時々Siriの検索や予測結果がGoogle Nowほど速く正確ではないこともあるが、Siriがここまで発展してきたら、ユーザはAppleのプラットフォーム上だけで満足する可能性が高く、Googleのサーチサービスにユーザのアクセスを持って行かれることはなくなっていくだろう。

Appleの公式マップがGoogle Mapsに取って代わる

apple-transit-maps-ios9

Appleはずっと自らのマップアプリがGoogleのマップアプリの代わりになるように望んでいるが、しかしその気持ちに実力が追いつかずに空回りするばかりで、Appleのマップは誕生以来ユーザの信頼を得られず、多くのユーザがGoogle Mapsを使っているのが現状だ。自社のマップアプリを改善するために、Appleは多くの努力を積み重ねてきた。そして今年ようやく公共交通ナビゲーションサービスを搭載することとなった。これによってバス、電車、地下鉄、船などの公共交通機関を使ったナビゲーションが可能となる。また駅の入り口や出口まで指示が出るようになる。

またiOS9版の公式マップアプリでは、ユーザは更に近くのレストラン、バー、ショッピングセンターや現在行われているイベントなどを検索できるようになる。

数年前のAppleのマップアプリは正直全然ダメだった。しかしiOS6からiOS9まで様々な改良が加えられたAppleのマップアプリは、国や地域によるところもあるが、Google Mapsアプリにひけをとらない完成度になってきたといえるだろう。

Apple MusicがAndroidでも使用可能に

Apple_Music

間違いない!Appleは破天荒にもAndroidアプリをリリースするというのだ。Appleは新しいストリーミングメディアアプリ”Apple Music”のリリースを発表してAppleファンを興奮させているが、実はこれはAppleやiOSユーザだけのものではない。Androidユーザもアカウントを登録すれば使うことができるのだ。

正直Apple Musicそのものは特に印象深いところはない(他社が既にやっている既存のサービスなので。。)。ただ、Apple MusicのAndroidアプリがリリースされるということの意義は大きい。GoogleはこれまでもiOSプラットフォーム上でGoogleサービス関連アプリをリリースすることをずっと諦めていなかったが、今度はAppleのサービスがAndroidに侵入することになるのだ。

プライバシーの重視でGoogleと差をつける

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Appleのプライバシー保護について、本当にティム・クックCEOが語っているようになされているかについては、私たちには正直わからない。しかしユーザのプライバシーについての問題は、去年テック業界でもホットな話題となった。そしてAppleはプライバシー保護については自身の態度と立場を明確にしている

Appleは今年のWWDCで再度、自身とGoogleやFacebookとの間に線引きをした。Appleはユーザに自分がGoogleやFacebookと違って、ユーザ自身が売られるのを待っている製品を売りつけられる対象とみなされるのではなく、制限されることなくサービスを享受できる匿名ユーザであることを保証するというのだ。最近多くのユーザがネット企業のプライバシー保護に対して懐疑的な気持ちを抱いている中、Appleが他社とは違うというアピールをするというこの戦略は非常に有効といえるだろう。

画蛇添足 One more thing…

GoogleがAndroidを出して、それがiOSにそっくりだったことからスティーブ・ジョブズが激怒したのは有名な話。それからずっとAppleはGoogleを敵視してきた。それはティム・クックの時代になっても一緒だ。もちろんGoogleもAppleをライバル視しているだろう。

ただ最近はGoogleはAppleに先駆けて面白いサービスや機能を展開し始めている。Appleはハードウェアを抱える分動きが遅くなってしまうのは無理もないが、いよいよGoogleの方がどんどん先行していく時代が来るかもしれない。AppleもGoogleと手を組むべきところは手を組んでいった方がいいのではないかと思う。

あの宿敵だったIBMとさえ握手をすることができたのだから。

記事は以上。

(記事情報元:WeiPhone

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