Appleのティム・クックCEO:中国当局にネットワークセキュリティ審査への積極的な協力を約束

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中国の新聞”新京報”の報道(via iPhone中文網)によると、1月22日、中国国家インターネット情報事務局主任の魯煒氏が去年12月初めに米国に視察に行った際に、AppleのCEOティム・クック(Tim Cook)と会談したという。会談の中で、クックは中国がAppleの製品に対してネットワークセキュリティの評価をすることに協力すると述べたという。

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この会談に参加した担当者によれば、会談の重点はApple製品の中国地区での安全保障についてだった。魯煒主任は会談で、「中国はAppleによって最大の市場の1つとなっており、中国もAppleなどのテクノロジー企業のトップのために市場を開放することを望んでいますが、その前提としてiPhone・iPadやMac等の製品が必ずユーザの情報セキュリティやプライバシーを守ることを保証し、同時に国家安全保障の維持も確保している必要があります」と述べた。

クックは魯煒氏との会談の中で「以前、我々が第三者にバックドアを使ってデータを提供しているという噂がありましたが、我々は過去にもそして将来にも、製品にバックドアを設けるようなことはありません」と自ら積極的に語った。その言葉を受けて魯煒氏は、「あなた個人が言ったことはあてになりません。あなたの新製品は我々のネットワークセキュリティの公式な評価を受ける必要があります。我々はそれによって、消費者が安心して使えるという結論を導き出す必要があります」と答えたという。

クックはそれに対し、その場でAppleは全力で中国のApple製品に対するネットワークセキュリティ審査の受け入れに協力することを表明し、ユーザが製品の使用中に安全で信頼性が高いことを感じられるようにすることを保証したい、と述べたという。

上記の責任者によれば、これはAppleが初めて中国当局による公式のネットワーク安全審査を受けると表明した初めての企業となったということだ。

画蛇添足

ユーザのプライバシーなどよりも、国家安全保障が重点なのは見え見え

中国では公然と完全に全てのネットワーク通信に対して監視・検閲が行われており、ユーザのプライバシーなど皆無なのは公の事実。

中国政府にとっては、個人のプライバシーなど正直どうでもいい。魯煒主任の本音は、間違いなく国家の安全保障だ(中国に限らず、日本や米国を含むどの国も国家の安全保障のためなら個人を犠牲にすることは厭わない。それを公然とやるかどうかの違いなだけだ)。

中国政府当局としては、中国の機密情報が海外企業からの製品やサービスを通じて他国に漏洩すること、そして反政府勢力が中国政府当局の監視を逃れるためにそれらのサービスを通じて通信されたり、中国政府にとって都合の悪い情報を無差別に発信されることを恐れており、その最先端で責任を負わされている魯煒主任は、自分のクビとメンツを保つためにもAppleに釘を差したかったのだろう。

Appleも、スティーブ・ジョブスがいた時代は米国政府との距離を置いていたようにみえたが、ティム・クックの時代になるとその距離を縮めているようにみえる。当ブログの先ほどの記事「Apple、2014年に米国政府へのロビー活動に約4億8000万円を支出していたことが明らかに」にも書いた通り、Appleの米政府ロビー活動費は全体的な支出の中では非常に少ないものの、2014年は2013年から18%も増えている。米政府の保護を受ける代償として米政府に有利な情報を渡していないということを誰が保証できるだろうか。

ハフポストの記事にもある通り、中国でなくても海外の大手サービス、FacebookやGoogle、Skype、Dropboxなどは米政府当局にデータを提供していることはエドワード・スノーデンの暴露等で判明してしまっている。Appleも全く例外というわけではないだろう。

もちろん、我々一般人はそんな国家機密に関わるような情報に触れる機会もないし、わざわざ扱う必要もないといえる。

今後、Apple製品の中国での販売開始がますます遅れるようになるかも

そして、このティム・クックの約束は、Appleの最大の人気商品iPhoneの新機種が、中国市場で米国や日本など世界で一番初めに販売開始されることがなくなることを予感させる。中国大陸ではiPhone3GからiPhone5までは他国よりも遅く販売開始となっていたが、iPhone5s/5cでは突如世界第一弾販売開始国の一員となって周囲を驚かせた。しかし去年のiPhone6/6 Plusではまたもや前と同様、販売開始が2ヶ月以上遅れてしまった。そのことが、日本のSIMフリー版iPhone6/6 Plusを求めて日本のApple Storeに並んでトラブルを起こす中国人、というニュースに繋がっていた。

ただ、これまでAppleも中国の審査を受けていないわけではない。中国では通信機器は必ず工業信息部の”ネットワーク許可(入网许可)”を取得しなければならなかった。去年iPhone6/6 Plusの販売が遅れたのもこのネットワーク許可が出るのが遅かったのが最大の原因といわれている。

今後”ネットワーク許可”だけではなく、上記の中国政府当局の新製品のネットワークセキュリティ審査を受けることになれば、更に中国での販売開始に時間と、手続費と称した公然の賄賂に要する資金が増えることになるだろう。ただでさえ増値税17%がのっている高価な中国大陸版は、この中国国家による”公式”検査の追加によってますます値段があがってしまうかもしれない。

そして本当にそうなったとしたら、、時間差と価格差は、ますます中国大陸内での”水貨(密輸品)”の横行を助長するだろう。そうなった方が密輸品の輸送や販売など、あらゆる関連した仕事に従事する人間が増え、失業率が下がって中国政府としては大助かりなのか?など穿った見方もしてしまったりして(以上は完全に私個人の見解)。

記事は以上。

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